夏以降にわかにブームとなっているのがベリーパター、いわゆる中尺パターだ。ものによっては数週間から数カ月ものバックオーダーを抱えるほど注文が殺到している。
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プロにも大人気
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中尺パターでも圧倒的なシェアを誇るオデッセイ。「通常せいぜい数十本単位だったバックオーダーが現在5000本を越え、売れ筋のホワイトスチールに至っては今注文して入荷は年明け」(キャロウェイゴルフ)
「在庫するショップすらなかったのが、引き合いが殺到して3週間待ち」(マグレガーゴルフ)。「41インチのゼクシオMI-5100MDの10月の出荷は9月に比べて4倍。通常の長さ以上に売れた」(SRIスポーツ)とどのメーカーも驚きを隠さない。
第一の要因として挙げられるのは、片山晋呉や横峯さくら、中学生ゴルファー伊藤涼太などメディアでの露出度が高い若手選手が次々と使いはじめたこと。これによって「シニアみたい」「いかにも自信がなさそう」といったマイナスイメージが払拭され、抵抗感がなくなったのが大きい。
二番目は、中尺パターに関する情報がようやく広まり始めたこと。これまでは打ち方を教えてくれる人もレッスン書もほとんどなく、実際中尺を手にしたものの戸惑っていた人も多かった。
「グリップエンドをお腹につけるやり方は、慣れるまで案外難しいものですが、プロがお腹につけないスタイルで打っているのを見て、いろいろな打ち方ができることが理解されてきたようです。一部のトップアマは早くから使っていましたが、ここに来て一般のゴルファーの愛用者が増えて来ました」(マグレガーゴルフ・松下健氏)
ブームを受けて、これまでほとんど中尺パターを手がけてこなかった国内大手メーカーも本腰を入れ始めた。
ブリヂストンは同社初の中尺パター、シナジーSPⅡプラスを今月発売するが、「団塊世代向けのシナジーブランドで様子を見ながら」(ブリヂストンスポーツ広報室長/嶋崎平人氏)今後徐々にバリエーションを広げていく考えだ。
SRIスポーツでも何種類かの中尺モデルを開発中。
「パターは好みがはっきり分かれるだけに、中尺を試しみたくても気に入るヘッドがないという人も多いと思われるので、ヘッドのバリエーションを増やせば中尺パターの需要はさらに大きくなるのでは」(同社経営企画部/藤田英明氏)と予測している。
一方、巷の工房ではプチ中尺へ改造するゴルファーが増えている。
「2、3インチも伸ばせばゆっくりしたストロークで振れるし、グリップエンド側を余らせて握れば、リストワークが使えないためしっかりストロークできます。また、グリップが長い分、両手の感覚を離すスプリットハンドやクロスのスプリットハンドなど多彩な握り方に対応できるのも強み」(シャフト・グリップ専門店スパイグラス/玉嵜秀人氏)
マグレガーゴルフからもプチ中尺パターが登場しそうだ。
「現在中尺の標準となっている41インチは女子選手には長すぎます。37、38インチは打ち方を変えずに安定したストロークが得られる長さ。今後、長尺と二分化する可能性があります」(同社・松下氏)との見方だ。
中尺パターの大流行は、グリップメーカーにとっても救世主的存在となりそうだ。パター用グリップ最大手のウィングリップは9月の1カ月間で、小売価格が通常グリップの約2倍で利益率も高い中尺用グリップを昨年1年間に相当する数量を出荷した。
同社ではニギリの部分を太く改良した新商品2タイプを発売する予定で、このカテゴリーでの地位を不動のものとする考えだ。ブームはまだまだ拡大しそうだ。
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