かつて日本経済新聞社系列企業が経営するゴルフ場だった木更津ゴルフクラブ(千葉)の更生計画が、10月31日付で正式に認可決定を受けた。管財人が押すゴールドマン・サックス(以下、GS)をスポンサーとする計画案と、会員による中間法人による自主再建型の計画案の一騎打ちは、会員側の圧勝という結果に終わった。
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再建のメドがついた木更津GC
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日経グループ70パーセント、地主の内房産業30パーセント出資の株式会社木更津ゴルフ倶楽部(以下、KGC)が運営を担当する一方、会員から預託金を預かり、コースを建設、クラブハウスなど施設の所有権を地主の内房産業が保有、その両社が決定的に対立するに至ったのは、今から3年前の平成14年10月のこと。
対立の根本的な原因は、1社で担うべき役割を、2社に分けるいびつな契約にある。日銭は全てKGCに入るのに、預託金返還債務があるのは日経とは資本関係が一切ない地主の内房産業。
代表者一族が個人資産を切り売りしながらの返還にギブアップ、日経からの出向者が高給をとり続け、預託金返還に必要な積み立てを怠ったと主張する内房産業に対し、日経が破産の申立を行ったことで、対決の火ぶたが切られた。その後は互いに互いの会社更生手続の開始を申し立てる展開に。
その上、いったんはスポンサーに就任した日経も、日経の経営責任を問う地主との対立の中でスポンサーを下り、そこへ急遽スポンサーとして管財人が連れてきたのが、債権者でも何でもなかったGSだった。
これによってセミパブリック化を恐れる会員が中間法人を設立、自らも更生計画案を作成し、GSをスポンサーとする管財人案の2案についての可否を問うことになった。
KGC、内房産業両社を合併させて株式を取得する点は両案共通だが、弁済条件はGS案は退会会員が85パーセントカットで残りを更生計画認可決定確定日から6カ月以内の一括弁済、継続会員は80パーセントカットで残りは10年据え置き。
会員案は継続・退会を問わず90パーセントカットで残りをKGC、内房産業の合併日から2カ月以内に一括払い。継続会員は中間法人への入会金(正会員40万円、平日20万円)との相殺があり、追加負担の有無には個人差が出る、というものだった。
10月4日開催の債権者集会では、内房産業は会員案で可決、KGCは管財人案で可決という結果に。内房産業の負債はほぼ預託金のみで64億円だが、KGCの負債は一般更生債権が4億6125万円で、更生担保権が1363万円。
更生法では、担保を持つ更生担保権者と、担保のない一般更生債権者とで別々に決議をする上、両方の案に賛成することも可能。このため、内房産業では会員案への賛成が67.67パーセント、管財人案(=GS案)への賛成が35.45パーセントで会員案が可決。
一方、KGCのうち一般更生債権については会員案53.23パーセント、管財人案88.89パーセント。更生担保権では他社のリース債権を後から取得したGSが唯一の更生担保権者であったこともあり、こちらは管財人案97.80パーセントに対し会員案はわずか4.01パーセント。
金額だけで比べれば、会員案46億円対管財人案27億円だが、内房産業が会員案で可決、KGCは管財人案で可決という結果になったわけだ。
そこで、会員側は更生法200条1項の権利保護条項の適用による会員案認可を要望。権利保護条項とは、「反対組に一定の補償をして更生計画を認可してもらう制度で、昭和40年代には事例が多少あったが、この20~30年ではおそらく例がない」(倒産法に詳しい弁護士)
約1カ月の審理の結果、裁判所が出した結論は、権利保護条項を適用しての会員案での認可決定だった。
理由は、会員側の計画案の弁済条件で反対組、つまりGSへの補償要件を満たしていること、そしてKGCを管財人案で再建すると内房産業の再建が遂行出来ないことの2点だ。
晴れて計画認可を勝ち取った会員組織にとって、最後の関門は地主との交渉だ。支払能力への不安を理由に、スポンサー型を希望していた地主との交渉が首尾良くまとまれば、外資との競合に勝って会員による自主再建を勝ち得たモデルケースとなることは間違いない。
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