最初の提訴から足かけ6年、11月8日、浜野ゴルフクラブのコース施設に設定されていた、極度額200億円の根抵当権の抹消を命じる判決を最高裁が下した。この判決によってゴールドマン・サックスグループ(以下GS)は200億円の根抵当権の権利とともに最大債権者としての権利も失い、同GCを経営する株式会社国際友情倶楽部の債権者は、ほぼ会員のみとなることが確定した。
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自主再建を目指す浜野GC
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問題の根抵当権は、10年前に日東興業の債務のために旧あさひ銀行が付けたもの。その後日東興業が和議手続きに入り、コースを競売されないように国際友情倶楽部が旧あさひ銀行との間で、13年間で59億円を返済する弁済協定を締結。
これに猛反発した会員が、会員債権者に対する詐害行為だとして、弁済協定の取り消しと根抵当権の抹消を求めて提訴したのが6年前。
その後、日東興業を買収したGSグループがこの旧あさひ銀行の担保も買取り、国際友情倶楽部は日東興業ともども民事再生申立に踏み切るが、会員組織が会社更生で対抗した。
民事再生が棄却されて会社更生による再建が決定、会員が申し立てていた弁済協定の取り消しと根抵当権の抹消請求という二つの訴訟は管財人が引き継ぐことになった。
会社更生法78条で、更生債権者の利益を害することを知っていながら行った行為、つまり詐害行為を管財人は否認出来ると規定している。
国際友情倶楽部はもともと327億円の資産と132億円の負債を持つ会社だったので、帳簿上は資産を全部処分すれば充分債権者に借金を返せる会社だった。
ところが、日東興業の債務のために200億円もの担保を何の見返りもなく付けさせたことで、327億円の資産と232億円の負債を抱える、差引5億円の債務超過会社になってしまったわけだ。
旧あさひ銀行が預託金債権者の権利を侵害することを知りながら担保を付けたのは誰の目にも明らか。このため管財人側の主張は更生法78条に則り、この200億円の担保設定自体を抹消せよ、というものだった。
対するGS側が引き合いに出したのは民法424条。国際友情倶楽部は200億円の担保設定によって5億円の債務超過になった。
しかし債務超過でなければ計算上は債権者に負債は全額返せるのだから、取り消されるのは5億円分だけで充分、というのがこの条文の解釈を使ったGSの主張だ。
つまり詐害行為であることは争点ではなく、更生法78条を根拠にゴルフ場施設全体についた担保を全部抹消すべきという管財人の主張と、民法424条を根拠に5億円分の土地1筆で充分というGS側の主張のぶつかり合いだったわけだ。
平成15年9月に東京地裁が下した1審判決ではGSが勝訴したが、昨年10月に東京高裁が下した2審判決では管財人が逆転勝訴。そして今回の最高裁も管財人勝訴の判決を下した。
決め手になったのは、更生手続きがその会社の事業の維持更生を図る目的の手続きであるという点だ。ゴルフ場の場合、一筆だけ担保が抹消されても何の意味もない。
この判決を受け、晴れて債権者はほぼ会員のみになり、スポンサーを連れてくる必要はなくなった。
今年12月末の予定だった更生計画案の提出は年明け以降にずれこむことになるが、「今後は会員の意向をよく聞いた上で計画案を作成する手続きに入る。株主会員制のような形になるかもしれない。春には債権者集会が開ける様なスケジュールになると思う」(手塚一男管財人)
また弁済協定については1審、2審とも無効との判断を下しており、今回最高裁も上告を受理しなかったので、すでに協定に基づいて支払ってしまった4億円弱も早晩返還される。
今回は更生手続き中だった上に、会員には他の日東グループのコース利用など日東興業から受ける利益が何もなく、一方的に損害を被ったわけで、施設が処分されると利用権が奪われてしまうなど、詐害行為であると認定出来る条件が十分にそろっていた。
その点で他のコースにも応用が可能かどうかはケースバイケースだが、いずれにしてもまた一つ、外資との法定闘争を経て会員が自治を獲得したモデルケースが誕生したと言えるだろう。
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