法的手続きを経たゴルフ場の会員権を中心に、ここ数年着実に増え続けてきたプレー会員権。投機対象としてゴルフ会員権を見る会員権購入者は今やほぼ絶滅状態だが、圧倒的主流派たるプレー目的の会員権購入者にとって、プレー会員権は預託金型の会員権と、どう違うのだろうか。
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メンバーライフも変わりそう
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一口にプレー会員権と言ってもいくつか種類がある。入会金のみで預託金なし、譲渡不可の終身型でも1代限りのものもあれば、1代だけ相続を認めるものもある。譲渡を認めるものもあるし、預託金ありでも一定期間で順次償却してゼロにしてしまうものも広い意味ではプレー会員権と呼ばれ、現在では120コース以上で発行されている。
事実上、株主会員制か預託金制かの選択肢しかなかった会員権の世界に、ここ数年でプレー会員権が着実にシェアを広げた最大の原因は、会社更生をはじめとする法的手続きの多発だ。
破産や特別清算といった清算型の法的手続きに入ったり、競売でコース施設が売却されてしまった場合、従来の会員権は即紙くず。
預託金返還請求権もプレー権もなくなってしまうが、新たにコース施設を取得した新・経営者にとっては、年会費を納めてくれる『会員』は経営戦略上重要な存在だ。そこで預託金なしのプレー権のみの会員権を発行して会員をつなぎとめるという手法が主流になった。
民事再生や会社更生といった再建型の場合でも、営業譲渡という手法を使うと、もともとの会社は清算されてしまう。そこで営業譲渡先の会社が旧会員にプレー会員権を発行するわけだが、いずれにしても、会員は優先的施設利用権という権利を持つ一方で、年会費支払いという義務を負う。
預託金型会員権との違いは預託金返還請求権がない、という点に尽きる。「いま、購入者が最も重要視するのは経営会社の安定度。プレー会員権か預託金型かはまったく相場に影響を与えていない」(首都圏のゴルフ会員権業者)という。
破産になったり、競売でコース施設が第三者に売却されたりすれば預託金の返還など望めないのは言うに及ばず、何よりも法的にプレー権も失ってしまう。
同じコースの会員権でも預託金額面によって価格が違ったのは昔の話。価格は預託金額面ではなく、名変手数料に左右される。会員権の価格と名変手数料の合計額が実質的な『相場』なので、名変手数料が上がると即、価格は下がってしまう傾向にある。
従って、「経営者が代わって名変料が引き上げられると、いきなり相場下落リスクを被ってしまうので、その意味でも経営会社が安定していて、なおかつ会員にとって不利益な経営方針ではない会社が経営している、ということが重要視される」(前出の会員権業者)のだ。
値段には影響がないとして、それでは法的にはどうなのか。
「預託金がないのだから、預託金返還請求訴訟をきっかけにコース経営会社が倒産するリスクはないし、会員は施設利用権という『債権』を持つ『債権者』なので、ゴルフ場経営会社の帳簿閲覧請求権もある。唯一のウィークポイントは、ゴルフ場経営会社が法的整理に入った場合、会員が手続きに債権者として参加出来る保証がない点」(ゴルフ場問題に詳しい西村國彦弁護士)だという。
というのも、倒産手続き上、手続きに参加出来るのは借金を踏み倒される債権者のみ。施設利用権は、共益債権、つまり無担保の一般債権者全体の利益になるような債権で、カットの対象にならないもの、とする考え方が主流。
このことは、法的手続きに入った後もプレー権は保証されても、スポンサーをどこにするかや、運営方針をどうするかといった、再建計画案には一切口を挟めなくなることを意味する。
手続きに参加するには、プレー権を金銭価値に引き直したらいくらになるのかを計算した上で、カットの対象になることも覚悟の上で債権届け出をしなくてはならない。
そうなるとプレー権の一部カットによって利用できる時間が限られるのか、という話にもなるわけで、そもそも果たしてプレー権が金銭評価の対象になるのかどうかについても、裁判所の判断がはっきり確定しているとは言い難い。
やはり会員権は経営会社の安定度で選ぶもの、というのが王道であることに間違いはないようだ。
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