巨額の含み損の処理を終えた東急不動産が、那須国際、大多喜城に続き、有名コース2コースを年内に取得、今後積極的にゴルフ場買収を進めていく方針を明らかにした。
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千葉県の人気コース鶴舞CC
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今回買収が決まったのは、千葉県市原市の鶴舞CCと、茨城県坂東市の猿島CC。鶴舞CCは三井化学系列のコースとして昭和46年にオープン、箱崎ICから車で1時間20分という好立地コース。
平成10年に経営会社である房総興発の株式が三井物産に譲渡されて以降、三井物産の系列コースとして運営されてきた。
東急不動産は三井物産から房総興発の株式を譲り受ける形で取得しているため、房総興発は東急不動産の100パーセント子会社になる。このため、約3000名からの預託金債務を抱えた会社ごと、取得したことになる。
すでに預託金の償還期限は到来しているが、平成14年に10年延長を要請しており、「会員は友好的という印象」(東急不動産広報)だという。
もう一つの猿島CCは平成14年に民事再生手続きの開始を申し立てた大日本土木の系列コースで、設計は岡本綾子、オープンは平成10年。パブリックだったために法的整理には至らなかったものを、今回首尾よく取得に成功したわけだ。
2コースとも好立地の優良コースだけに、値段は大いに気になるところだが、鶴舞の預託金総額も含め、金額は残念ながら非公開。
東急不動産はここ数年、決算の都度、保有不動産の含み損の処理で百億円単位の損失処理を実施してきた。
このうち、ゴルフ場では、シャトレーゼへの札幌東急とマサリカップ東急という北海道の2つの不採算コース売却で41億円、オーストラリア企業へのニセコ東急の売却で33億円、合計74億円の売却損を、今年3月末の決算で処理している。
そのほか、今年9月中間期では、和歌山の有田東急と、建設途中で開場のメドが立っていない岡山県の久米南の敷地で合計60億円の減損を実施している。
損失処理がほぼ一段落した今年10月には、公募増資と第三者割当増資で総額455億円を調達、賃貸用不動産の取得や開発事業に積極的に資金を投下していく方針を打ち出している。
それなら新規のゴルフ場開発も手がけるのかというと、そこはさすがに作れば100億円、買えば10~20億円の世界。
「新規にゴルフ場開発を手がける予定はないが、既存コースを積極的に買っていきたい。オペレーション能力を考えると、大体30コースくらいが目標。外資のようにバルクで買っていくということはせず、丁寧に検討して買っていきたい。倒産処理絡みか、まったくの任意売却かにはこだわらない」(東急不動産広報)という。
今回の2コースを含め、東急不動産の系列コースは、施設の所有権だけを売却し、預託金債務も経営権も手元に残したニセコ東急を含めて16。
30コースと言えば、現在15コースを経営しているユニマットも運営受託合わせて30コースが目標。すでにオリックスが20コースを超え、2大外資以外の国内勢のコース数は着実に増え続けている。
買い手候補は増える一方なのに売り物は減る一方。しかももはや自ら大枚を投じて建設しようというインセンティブは働く余地がない。欲しいコースは誰しも同じ。水面下の交渉が今後ますます熾烈を極めることになるのは間違いない。
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