一部の優良コースには買い手が殺到する一方、バブル崩壊後、減少の一途を辿っていた新規オープンが、2005年にはついにゼロになった。ゴルフ場は今後どうなっていくのだろうか。
「ゴルフ場の経営指標や係数は過去、常に景気変動に2年遅れて反応してきた」(日本ゴルフ場経営総合研究所の降旗貞夫専務理事)という通り、年間新規オープンコース数の最多記録は、バブル最盛期ではなく、バブル崩壊直後の1991年の109コース。
用地取得から許認可取得、建設にかかる時間を考えれば、91年にピークアウトしたのは当然といえば当然。なんといっても途中まで作ったら完成させてしまわなければどうにもならないのがゴルフ場。頑張って完成させたコースの開場が92年から93年まで続く。
バブル最盛期から末期にかけて計画が浮上したケースだと、用地取得と借地の確保が済んだところ、もしくはその手前でバブルが崩壊。
しかし崩壊直後は数年で景気は再び持ち直すと考えられていたから、手当してしまった土地をそのまま店ざらしにするという考え方をする経営者はまず居なかった。このため、用地取得を完了させ、なんとか許認可取得まではこぎ着けたというケースが少なくない。
金融機関の融資姿勢がバブル期とは180度変わり、その上『ゴルフ会員契約等の適正化法』が92年5月に交付され、 翌93年5月から施行されると、原則開場前に会員権を販売して建設資金を手当てすることが出来なくなった。
そんな逆風下で、最後まで頑張り通した経営者は思いの外多かったからこそ、01年まで二桁の開場が続いたのだろう。
それでは景気に明るさが見えてきたところで、来年以降新規オープンはまた増加し始めるのかというと、「ゴルフ場を自分で作ろうという奇特な経営者はもう出てはこないでしょう」(前出の降旗氏)という。
ゴルフ場はクラブハウス建設で15~20億円、コースの造成工事は1ホール2億円が目安なので、18ホールのゴルフ場建設費は最低でも50億円以上かかる。これに土地代が加わると、結局は60億円だ、70億円だという水準になる。
土地代を安く上げるために借地割合を増やすと、開場後に借地権料が収益を圧迫してしまう。「借地料だけで年間1億円を超えるコースも珍しくない。年間数千万円の純益を出すのがやっとというのがゴルフ場経営の実態だから、借地料の負担はかなり重い」
既存コースの争奪戦が加熱した結果、一部のコースで18ホールあたり50億円を超える値段が付き始めており、建設費との差はだいぶ縮まってきているかに見える。しかしゴルフ場の値段はこの1~2年で両極分解してしまい、高騰しているのは利益率の高いごく一部のコースだけ。
ただ、最近ではスタートがなかなかとれない、混んでいてハーフに3時間近くかかった、といった話をよく耳にする。ゴルフ場は不足しているのではないかとの疑問も湧くが、
「混んでいるのは利便性の高いごく一部のコースの、それも土日のみ。バブル崩壊後平日の接待ゴルフ需要が減退して以降は、赤字・黒字の分かれ目は平日のビジターの来場者数に左右され、その平日のビジターの来場者数を決めるのは価格でしかない。 どんなにハイグレードなコースでも、近隣コースよりも高ければダメ。そんな現象に陥ってしまう原因は、結局のところコース数が多すぎるから。 現在国内には約2400コースがあるが、500~600コースは過剰。 バブル崩壊から20年近くが経過しながら、必要な淘汰が行われずゴルフ場の数がいつまでたっても減らないのは、数億円で買えるなら生涯に一度はゴルフ場のオーナーになりたいという人が後を絶たないから。 どう頑張っても黒字にならないコースが、閉鎖に追い込まれることなく新たな買い手がついて生き延びて赤字を垂れ流し続けてしまう」(前出・降旗氏)
開場済みのコースですら過剰な日本のゴルフ場事情。それでも許認可を取得したまま店ざらしになっているコースの存在はは何とももったいない。
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