会員による自主運営型コースの先駆けとも言える、ニュー・セントアンドリュースゴルフクラブジャパン(以下、NSAJ)の経営会社・株式会社エヌ・エス・エイ・ジェイが、2月1日民事再生手続きの開始を申し立てた。オープン当時の経営母体が破綻し、会員の自主運営型コースに生まれ変わって25年。四半世紀を経て2度目の倒産に至ったことになる。
国内初のジャック・ニクラス設計のコースとして、NSAJがオープンしたのは昭和50年5月。その後経営母体の破綻でコースが競売されたため、会員が総額20億円でコース施設を競落、昭和54年から会員による自主運営に移行した。
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コースには定評がある
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会員に対しては株式の取得を要請する一方、会員数を減らすために会員権の買い取りも実施する一方で、ホテルの新築、増築、ナイター設備の設置などを実施、昭和61年には米国・セントアンドリュースとの提携でオールドコース(9H)を増設、同時にオールドコースへのアクセスのためのモノレールの設置も行うなど、昭和58年から61年までの4年間に、約23億円の設備投資を実施している。
地元足利銀行と栃木銀行との協調融資で借りた借金は、平成3年にいったん14億円まで減ったが、その後のバブル崩壊でゴルフ場の業容が悪化するに従って再度増加、平成10年には23億円にまで増えてしまった。
一方ゴルフ場の業容は、平成3年に20億円の売上を記録して以降、減少の一途を辿り、平成5年に大赤字を出したことから債務超過に。以降、赤字と黒字を行ったり来たりしていたが、債務超過状態にあることには変わりがなく、銀行にも約定通り返済出来なくなっていく。
会員権相場が低迷する中、預託金の償還問題は永久債化で乗り切ったものの、平成15年に足利銀行が破綻、NSAJ向け債権はRCCに移管されてしまう。栃木銀行も債権を商工ローン・ニッシンのサービサー子会社・ニッシン債権回収に譲渡、1番抵当権を同順位で得たRCC、ニッシン債権回収両社から返済を迫られる。
今回の申立の直接原因はこの両社からの督促で、会社側は両社にある程度の金額を一括弁済することで競売を回避するため、30万円の拠出を会員に呼びかけている。
また、25年前に預託金はカットしていなかったため、今も45億円の預託金債務が残っており、①預託金の全額カットプラス30万円の拠出金、②拠出金を払わなかった会員には譲渡不可の終身会員権を発行、を柱にした計画案を想定している。
ただ、一括弁済を迫っている2社のうち、「RCCは当該コースの資産価値を5億円と見積もり、それに相当する返済を受けられれば交渉のテーブルに付く姿勢を見せているが、ニッシン債権回収はもっと高い金額を想定している」ことを、申立代理人の高木俊郎弁護士も認める。
30万円を約4000人居る会員(正・平合計)の半分の2000人から集めることが出来れば、RCCとは話が付く可能性があるが、ニッシン債権回収とはどうか疑問だ。
また、再建にあたって収益力をどう向上させていくのかも、「団体コンペをもっと積極的に取りに行くことや、会員にもっと使ってもらう努力をする」(高木弁護士)といったところにとどまり、抜本策とは言い難い。
売上は平成16年12月期で5億5700万円、営業赤字は3200万円。今回首尾良く無借金になり、金利負担がなくなったとしても、過去可能な経費カットはほぼやりつくしているだけに、営業利益を黒字化するには、売上を伸ばすしかない。
しかし同コースは栃木県県北地区という立地に加え、シングルでさえ手こずる難コース。ラウンドに要する時間が長いため営業効率はどうしても落ちる。会員による自主運営という性格上からも集客は簡単ではない。
一部の会員からも、「預託金の100パーセントカットじゃ破産と同じ。プレー権は破産でも付くのが常識だし、その上拠出金もというのであれば、収益をどう改善していくのか、具体策が見られなければ、また3度目の倒産が待っていることになってしまう」といった不満の声が出ているのも事実だ。
過去25年間、決算内容の公表に代表される通り、透明な運営を維持してきただけに、自主運営型を残した上で、会員が一枚岩になれる方向性を期待したい。
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