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週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
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週刊ゴルフダイジェスト 3/14号
2006/3/2更新
「高反発が売り物」だった地クラブメーカー
SLE規制ルールで「作るべきクラブはどっち?」

 主要メーカーのルール適合ドライバーはほぼ出揃った。しかし、小規模のいわゆる「地クラブ」メーカーの中には、春商戦が本格化する時期を迎えても、新製品の発表を見合わせているところもある。

 高反発での実績をリセットし、SLEルール適合ドライバーの開発では横一線かと思いきや、実はスタート時点でハンディを背負っていた地クラブメーカー。

 98年、USGAが01年から反発係数0.83以上のクラブを規制することを発表して以来、米国はもちろん、輸出を手がける日本の大手メーカーも、高反発ドライバーと同時に、ルール適合ドライバーの開発を行ってきた。

 地クラブメーカーがルール適合ドライバーの開発に腰を上げたのは、03年に国内男子ツアーで高反発が使えなくなってからだ。それでもアマチュア向けは、ぎりぎりまでどう転ぶかわからないという期待感を持ち続けていたメーカーもある。

 高反発を売り物にして上級者を中心に人気を集めてきたカムイプロ。製造販売を手がける中条では、昨年発売したカムイプロ430のルール適合モデルをこの2月に発売したが、高反発モデルを上回る引き合いがあるという。

 しかし、本格的なルール適合ドライバーの完成にはしばらく時間を要するそうだ。「重量だけの問題ではありません。ルール適合ドライバーの開発にはコストも時間もかかります」(中条佳市社長)

 その一方で、高反発にこだわり続ける方針も示している。
「アマチュアにとってゴルフの醍醐味は飛ばし。99パーセントのゴルファーは今より1ヤードでも飛ばしたいと思っているはずです。クラブの飛びを抑制することは、そうしたゴルファーの楽しさを奪うことになります。売れるか売れないかは別として、高反発は作り続けます」

 プロ、アマ問わず競技ゴルファーに支持されているグランプリの田中浩士社長も、
「SLEルールはタイガーを勝たせないために作られたルール。それなのにシニアや女性、飛ばないプロがますます不利になった。大手メーカーは輸出が多いので喜んでいるかもしれないが、反発係数0.83以下というのは5年以上前のレベル」と、ルールそのものに疑問を投げかけながらも、小回りの利く地クラブメーカーならではの強味があると自信を見せる。

「I・J・ジャンはじめツアープロが多く使っているので、もともと低反発も作っています。フェース厚も一人一人にフィッティングさせるために2ミリから3.3ミリまで0.1ミリ単位で用意しています」
 ちなみに同社でも、08年以降、高反発を作り続けると明言している。

 そんな中で、地クラブメーカーとしてはいち早く高反発からルール適合クラブへ完全シフトする方針を掲げたのはゴリラ。

「次期モデルのアルマは開発当初はルール適合と高反発の両方を作る体制でスタートしましたが、今後ルール違反クラブは作るなという社長命令で、適合クラブ1本に絞り込みました」(カナモリ・ゴリラゴルフ事業部/市井進氏)
 開発は約2年半前に始まっているが、完成は来春を予定。

ルール適合クラブの開発には時間もコストも高反発の2、3倍はかかります。高反発は反発最優先で、強度的に問題のない範囲でフェースを薄くすればよかったので、ある意味簡単でした。しかしルール適合となると、ボディの厚み、重量、体積すべてが関わってきて、設計自体が難しい。その上、ルールぎりぎりの反発係数にするために、試作品の度に測定しなくてはいけない。試行錯誤の繰り返しです」(市井氏)

 高価な測定機器を自社で購入できないため、そのたびに県の工業試験場や大手メーカーに持ち込む手間も開発を遅らせている最大の要因だ。

 またヘッドだけでは補いきれないため、シャフトに求められる役割も大きくなっている。シャフトメーカーに依頼するサンプルの数や、テストの回数も多くなった。

「180度違う発想が求められています。まず素材の研究から始めないといけない。たとえば、クラウンをどれくらいたわませるか。大きすぎてもマイナス効果になる。薄く作る必要があるので、粘りがあって割れにくい素材を選ばなければいけません。工業試験場や富山大学の研究室と共同で研究しています」(市井氏)
 生き残りをかけ、地クラブメーカーはそれぞれの道を歩み始めた。

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