この2月初旬に就任したUSGAの新会長、その名はウォルター・ドライバー・Jr。300ヤードのドライバーショットを放つという、歴代のUSGAの会長の中でももっとも飛ばし屋のゴルファーらしいが、名前が名前だけに、新会長の下での「用品規制」が注目されている。
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「ゴルフ用品の新技術が発表されるたびに飛距離が伸び、ゴルフコースを造るのにより多くの土地が必要になる。土地を購入し、開発し、より多くの水や肥料・農薬を使って管理しなければならなくなる。
それだけでも費用がかかることだが、飛ぶ用品を求めて、ゴルファーが費やすお金も問題だ。というのも、ゴルフの発展にはジュニアの育成や女性ゴルファーの増加が不可欠だが、ゴルフ代が高くなればこの問題にも影響を及ぼす。テクノロジーの発達は、ゴルフの発展に悪影響を与えかねない」
とこの新会長は公言しているからだ。
結論から先に言うと、今年は用品に関するルール改革はないだろう、という見方が強いが、USGA用品委員会の委員長として02年にR&Aと今後の基本方針を発表し、プレーヤーの飛距離のアップに対して確固たる信念を持っている人物だけに、来年にはなんらかの動きがあるだろう、と見られている。
ドライバー新会長は、タイガー・ウッズが在籍したスタンフォード大学のゴルフ部出身。25歳で大学・法律学校を卒業した後は、ジョージア州アトランタで、800名の弁護士を抱える大事務所のボス弁として、35年ほど勤め上げている。
ゴルフ界とのつながりは、自身がハンディ0.2というスクラッチプレーヤーであることに加え、弁護士としてグリーンキーパーズ協会のコンサルタントをしていたのが縁という。それだけに用品の進歩による飛距離の伸びとゴルフコースの経費増大に関しては、これまでの会長より目が利くのかもしれない。
ただ、弁護士をしていた分だけ慎重な性格のようで、寡黙だが、あらゆる下調べやデータが揃ったときには、きっぱりと決断し行動するタイプの人物として定評がある。
現在、USGAが問題にしているのは、ゴルフボールの飛距離制限だが、この問題に関しては、まだ十分なテストが行われておらず、そのため今年に限ってはボールの規制・ルール改定はないものと見られている。
というのも、昨年4月にUSGAがボールメーカー各社に要請した「飛ばないボールの試作品」開発が遅れているのが理由だ。1月末の時点では、まだ2種類のテストボールしか提出されていない状況という。
今後、サンプルボールが除々にメーカー各社から送られてくる模様だが、そこそこ出揃ってからテストを開始できるのは、今年の夏あたりと見られている。つまり今年いっぱいデータ収集に忙しく、規制にまでは手が回らないらしい。
USGAの会長任期は1年で、1回だけ再選が許されている。つまり、最長2年間しか同一人物が会長職に留まることができないことから、来年07年には何らかのボール規制なり、用具の改革案が出てくるのではないかという見方が有力だ。
「飛ばないボール」の使用という点では、マスターズで採用が取り沙汰されたことがあるが、ドライバー会長もリッドレイ前会長も、ともにオーガスタナショナルのメンバー。
しかし、「オーガスタのメンバーと(USGAの理事が)重なり合っているのは事実だが、同じ人間、あるいは同じ方法で決定が行われるわけではない。USGAはプライベートクラブの運営には口を挟まない」と語っている。
オーガスタといういちプライベートコースに比べれば、USGAがゴルフ界に及ぼす影響力と立場は、はるかに大きい。その意味で規制を推し進めた場合、日本も含めた世界中のゴルフ業界に波及するだろう。
どうやらUSGAが目指しているのは、プロのロングヒッターにとっては飛距離が落ちるが、一般のアマチュアゴルファーには影響のないゴルフボールの開発らしい。そんなボールが開発されるのかどうかも含め、ドライバー新会長とUSGAの動きが注目される。
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