この冬に大量の雪が降ったことでコースが傷んだことを理由に兵庫県加東郡社町にあるGパーク吉川ゴルフ倶楽部が3月1日からコースを閉鎖中だ。ところが閉鎖理由がそう簡単なことではなさそうなのである。
2月10日付けの『お知らせ』によっていきなり3月1日からの一時閉鎖が通知されたが、その『お知らせ』によると
「昨年の4月より株式会社ジー・パークが運営を開始したが、収益が上がらないまま今日に至っているところに大量の降雪によりコース内に多数の修理箇所が発見され、お客に満足してもらうための工事には長い歳月と莫大な費用がかかると予想され、営業を続けながらの工事は不可能」として閉鎖するというもの。
ところが、閉鎖期間が示されておらず、閉鎖中は同系列の滋賀県にあるGパーク信楽ゴルフ倶楽部を中心に運営していくというもの(他に同系列のGパーク山南ゴルフ倶楽部がある)。なぜゴルフ場再開の予定期日を示せないのか。
その理由は、ゴルフ場の土地所有者である宗教法人清水寺と平木地上権組合から土地の明け渡しと賃貸料等の支払いを求められる裁判を起こされ、3月24日に判決が出ることにあるようなのだ。
清水寺、平木地上権組合の代理人である吉井正明弁護士はこれまでの経緯をこう語る。
「平成元年にビッグワンカントリークラブ吉川・社コースの経営会社だった日興観光株式会社と賃貸借契約を締結。ところが、日興観光株式会社が平成11年12月に営業権を株式会社ジービーエスに譲渡。さらに株式会社ジービーエスは平成15年1月にゴルフ場名をシティワンゴルフ倶楽部に変更して株式会社シティワンにゴルフ場の運営を委託。
しかし、平成15年の末頃から地代と固定資産税の滞納が続き、支払いの催促に応じなかったことから平成16年の5月末で契約を解除することを通知。ところが、清水寺、平木地上権組合の知らないところで平成17年4月に運営委託が株式会社シティワンから株式会社ジー・パークという会社に代わり、ゴルフ場名もGパーク吉川ゴルフ倶楽部に。
その後、賃貸契約を結びたいという話があったが、事前に何の承諾を得ることもなく、事後承諾で事を済ませようという会社は信用できず、立ち退きを求めたが応じずに不法占拠。そこで、株式会社ジー・パークに対しては土地の明け渡しと不法占拠期間中の地代を求めて平成17年6月に訴訟を起こしたのです」
その判決が3月24日に出るわけだが「もちろん勝訴の判決が出るはず。相手は控訴という手段がありますが、それでも年内には決着がつくでしょう」(前出・吉井弁護士)と言う。
土地が明け渡されると、とうぜん会員は吉川ゴルフ倶楽部でプレーできなくなってしまう。
株式会社ジー・パークの米井幹男代表取締役はこう言う。
「土地の明け渡しを予想しての閉鎖と思われても仕方がないかもしれません。しかし、判決もまだ出てませんし、今後も話合いを進めるつもりです」
そこで、土地の明け渡しが現実のものとなってくると、『会員権からゴルフ利用権会員への移行』問題が大きく浮上してくることになる。
株式会社ジー・パークが運営を引き受けてから系列の3ゴルフ場の会員権を持つ会員に対し「入会当時の会員権の預託金の返還を期待してもその可能性はゼロに近い。会員権を有効に利用するために3ゴルフ場が利用できる利用会員権への移行」をすすめてきたからだ。
預託金は消滅するが、預託金の額に応じて何口かに利用権が分割でき、余った利用権は売買することも可能でさらにはプレー代、年会費も通常の会員より安い等の特典があり、移行費用は事務手数料の9800円のみ、というのが謳い文句だった。
この利用権会員に切り替えた会員は「だいたい5000名くらい」(関係者の話)というが、この利用権への移行を開始したのが平成17年の8月。
すでに土地の明け渡し訴訟を起こされており、9月には第1回公判も開かれているが、現在も利用権への移行は継続中だ。
「裁判になっていることを知らせず、裁判に敗れた時には土地を明け渡し、プレーできなくなることがわかっていて利用権会員への移行をすすめているわけですから詐欺的行為といっていいでしょう」と会員権問題に詳しい宅島康二弁護士は言う。
株式会社ジー・パーク側は「1ゴルフ場でプレーできなくなってもあと2ゴルフ場でプレーしていただけますから、権利の喪失にはならないと思います」と語るが、これから運営の中心となるGパーク信楽ゴルフ倶楽部も土地の所有者から土地明け渡しの裁判を起こされており、今後どうなるかわかない状況なのだ。
利用権に移行してもプレーするゴルフ場がひとつになれば利用権のメリットは薄く、そして預託金請求権も消えてしまっているとなると……会員の嘆きが聞こえてきそうだ。
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