年が明けても用品市場がいまひとつ盛り上がりに欠けるのは、SLEルール導入に伴うドライバーの買い控えが続いているせいもあるだろう。そんな中、今度は高反発アイアンが規制されるという話が伝わってきた。
発端は、昨年3月、国内クラブメーカー各社の開発担当者宛に送られてきた一通の書面。R&Aから送られてきたこの文書の内容は次の通りだ。
「第一に、2006年2月1日より、アイアンとパター以外のすべてのクラブ、すなわちドライビングクラブ、フェウェイウッド、ハイブリッドクラブ(ユーティリティ)は、ペンデュラムテスト機器で測定され、原稿の基準値である239μs+許容誤差18μsが適用される」
「また、同じく06年2月1日より、アイアンは、改造したペンデュラムテスト機器で選別、必要であればキャノンテストでも測定され、基準を超えたクラブは不適合となる。ただし、暫定期間中はペンデュラムテストの結果に基づいて不適合と裁定されることはない」(以上要約)
原文は、まさしく法律の条文のように難解な言い回しだが、要するに、今後はロフト15度以下のドライバーだけでなく、パター以外のすべての高反発クラブを規制対象とすることを表明しているわけで、すでにその規制は今年2月から始まっているということだ。
そうなると、いまあるクラブがそのうち全部使えなくなるのではと心配される。とくに最近、ドライバーの次はアイアンで飛ばせと言わんばかりに、高反発を謳い文句にしたアイアンが続々登場しているが、これらのクラブを使うことに問題はないのだろうか。
今春、反発力の高いマレージングフェースを採用した「410V」「435D」を発売したヤマハに聞いてみた。
「ドライバーほど強度はいらないので、アイアンの高反発は簡単にできます。ただ、ルールができた以上は守らなくてはいけないと考えています。今回は事前に情報が入ってきていたので、アイアンもルール内で開発を進めてきました」(ヤマハ・ゴルフ事業推進部/土田厚志氏)
また、反発係数値そのものをネーミングにした「i830」のカタナゴルフも、
「ルールは厳粛に受け止めており、ぎりぎりのところで作りました」(カタナゴルフ/会川真一郎営業本部長)と問題のないことを強調している。
一部、ルールを超えているアイアンも噂に上っているが、ほとんどのメーカーは冷静に受け止めており、表立った反対の動きも見られない。
いまだに市場で混乱が続いているドライバーの高反発規制の時とは対照的だ。その理由としては、いま現在、販売もしくは開発中のクラブに与える影響が少ないことが挙げられる。
「今回の決定はR&Aがクラブの行き過ぎた進化に先回りをして待ったをかけたものととらえています」(ミズノ広報宣伝部/西田維作氏)
また、違反と疑わしきアイアンでも、まだ適合か不適合を判断する基準も測定方法も確立されていないため、ルールが実際に適用されるのは、おそらく何年も先のことになる。
ドライバーの「2008年問題」と違って、アイアンの規制がゴルファーに直接影響を与えることはいまのところなさそうだ。しかしUSGAとR&Aによる規制の動きはこれだけで終わらない。
現在、両協会が具体化に向けて検討しているとされるのはMOI(慣性モーメント)の上限、ウェート調整クラブ、アイアンのスコアリングライン、そしてボールの規制だ。
つまり今後は飛距離だけでなく、やさしさまでもが規制の対象と考えられており、そうなれば一般のゴルファーにとっても影響は大きい。
「やさしさを奪うことはゴルフの入り口を狭めることにつながる」と、ゴルフ業界内では、ゴルフ全体に与える悪影響を危惧する声も根強い。今後は一体、誰のためのルール改正かといった議論も活発化しそうだ。
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