不正改造問題で俄然有名になった東横インが、破産手続き中の富士河口湖ゴルフ倶楽部のスポンサーを下り、現状営業再開のメドが立っていないことが明らかになった。
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「改造」はしてません
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富士河口湖GCの経営会社である富士河口湖倶楽部株式会社は、旧第一相互銀行グループが設立した会社だが、後に地元の土木建設業者で、同社の幹部でもあった高村博道氏らが株式を取得した。
第一相互銀行は後に普通銀行に転換し太平洋銀行に改称したが破綻、平成13年3月に同社向け債権を整理回収機構(以下、RCC)が譲り受けた。
RCCとの間では、コース売却も含め、債務弁済に関する協議が行われたものの進展せず、RCCが平成16年11月に破産申立に踏み切り、昨年1月、甲府地裁から破産宣告を受けることになった。
冬場はクローズになるこのコース、破産宣告を受けて会員が『富士河口湖ゴルフ倶楽部会員協議会』を立ち上げ、裁判所の許可を得て昨年4月に自主運営で営業を再開。スポンサーが東横インに決まったことから、昨年11月からは東横インによる営業に切り替わった。
破産宣告から10カ月後のスポンサー決定なので、ここまではほぼ世間並みのスケジュールでの推移と言えるが、問題はここからだ。
東横インが管財人と交わしたのはあくまで基本合意書。このコース、9割以上が借地なのだが、地主との条件交渉は当然、東横イン自身があたらなければならない。それゆえ、11月からの営業はあくまで仮営業だった。
ところが、「地主との交渉成立前にいきなり営業を始めてしまったり、高村前社長との関係が疑われるような人物が交渉に関与したりしていたので、当初から東横インの西田憲正社長に対する地主の不信感が燻っていた。そこへ不正改造問題が明るみに出て、決定的になってしまった」(地元関係者)という。
地主の猛反発で東横インはあっさり撤退を決め、スポンサー決定入札で2位だったアーバンコーポレーションも辞退したため、第一交渉権は大証ヘラクレス上場で大阪の不動産投資会社・レイコフに移った。
「東横インの際には、最初に基本合意書を締結してから地主との交渉を始めたので、今回は慎重に、地ならしをした上で、正式決定にもっていきたい」(破産管財人の深沢勲弁護士)という。
ただ、数十名に及ぶ地主の中には、会員として協議会に参加している地主もいれば、いわゆる『高村派』の地主もいるなど、一口に地主と言ってもその立場はさまざま。交渉成立までには、まだ相応の時間がかかるだろう、とみられている。
例年ならば営業が開始しているこの時期、気温が上がって芝も伸び始めているが、「3月いっぱいは東横インがスタッフの給与などの面倒を見てくれることになっている。しかしそれ以降のメドは立っていない」(現地スタッフ)のが現状だ。
会員協議会としては「プレー権の確保と、パブリック化を回避する運営方針をとってもらうようにレイコフには要望していく」(協議会副会長の饗場元彦弁護士)方針だ。
民事再生や会社更生ではなく破産であるだけに、債権者の意向をどの程度レイコフが汲んでくれるかは未知数だが、「会員に配慮した処理は、最大債権者であるRCCの基本方針でもあるので、期待している」(饗場弁護士)という。
それにしても、約半年分、遠回りしてしまったツケは軽くない。
「地主との交渉は、運営を円滑に進める上で、スポンサーの力量を問われる重要なポイント。うまくやっているところは、どこも地元の有力者を介するなどして、かなり神経を使って交渉をまとめている。外資系のコースの中にも、地主の合意を得ないまま事実上不法占拠状態というところがいくつかある、というのが実態です。それくらい地主との交渉は大変」(ゴルフ業界関係者)という。
深沢弁護士も「東横インはゴルフ場経営の経験がまったくなかったため、交渉ノウハウに欠けるところがあった」ことを認める。
「東横インは資金量が豊富なので、比較的アバウトな判断でスポンサーに名乗りを上げた印象がある。だからなのか、撤退決定も実にあっさりしたものでした」(地元関係者)。まずはレイコフの手腕に注目しよう。
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