「番狂わせ、予想外の結末」となった女子の今季メジャー第1戦、クラフト・ナビスコ選手権。カリー・ウェブ(豪州)が6年ぶり2度目の優勝を飾ったが、見る人が見ると、納得のいく展開だったともいえる。ここ最近、若手たちの人気の陰に隠れていた実力者が、本来の力を出した試合だったからだ。
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メジャー7勝目のダイブ
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今年のナビスコ選手権、最終日、最終組でラウンドしたのは、9アンダーのロレーナ・オチョア、6アンダーのミッシェル・ウィ、4アンダーのナタリー・ガルビスの若手3人だった。
普通に考えれば、優勝カップに手が届くのは、トップから5打差以内にいるこの3人に絞られるだろう。
しかしメジャー大会になると、ちょっと様子が違ってくる。オチョアは昨年の全米女子オープンの最終ホールの池ポチャで優勝を逃しているし、ウィも同じ女子オープンで最終日にトップに立ちながら、ショートパットをはずしまくってチャンスを逃している。
つまりプレッシャーがかかったときの若手の精神的脆さを指摘する声もあったのだ。
そして実際蓋を開けてみるとオチョアはスコアを落とし、ウィも追いかける場面ではスコアを伸ばしたものの、トップタイに並んだ時点でプレッシャーがかかり、そのまま伸び悩んでしまった。
こうした状況では、いつもならソレンスタムが急上昇してくる場合が多いが、今回は「意外な大物」がソレンスタムのお株を奪った。
3日目、76を叩いて優勝争いから脱落したかのようにように思われていたカリー・ウェブは最終日、こう自問していた。
「いったい私はここに、なにしに来たの? 一生懸命練習したのに集中力を欠いて、こんなことでやる気をなくしてどうするの?」と自分に言い聞かせ、なんと17番までに5つスコアを伸ばし、そして最終ホールのイーグルで65をマークし、オチョアとのプレーオフに持ち込む意地を見せた。
意地という点では、こんな話がある。
「ここ1年、女子ゴルフ界で話題になっているのは、ソレンスタムとウィ、それにクリーマーと宮里藍の4人だけ。ロレーナにとっては非常に屈辱的で、その分ガッツが出ているはず」と、オチョアの地元、メキシコのレポーターが語っていたが、ウェブの心情も同じだったはず。
かつてはソレンスタムと女王の座を争っていたが、ここ数年はマスコミに取り上げられることがなかったからだ。
そしてオチョアも、苦しみながらもパー5の最終ホールで2オンに成功させ、同じくイーグルを奪い、この日72の9アンダー。注目を集める若手たちを尻目に、プレーオフを戦ったのは豪州とメキシコのプロふたりだった。
結局はウェブに軍配があがったが、「壁の花」になりたくないという気持ちが、ふたりのメンタル面に、プラスに働いたのは間違いない。
「調子は悪くないし、納得のゆくゴルフができている。今回は落ち着いてプレーできた点で収穫はあったが、やはりメンタル面が大きい」と語ったのは、奇しくも宮里藍だった。
また初日3オーバーで、ほとんど注目されなかった不動裕理は、試合が終わって見れば、宮里に4打差をつけ、2オーバーの15位タイでフィニッシュ。「宮里さんが頑張っているから」と語りながらも、日本の賞金女王の意地を見せた。
アメリカでは、女子のワールドランキングが発表されたとき、ウィがいきなり3位でスタートしたことで論議を呼んだが、ウィと同時に問題になったのは、日本の不動の4位というランクだった。
そのためLPGAのビベンスコミッショナーは、不動の日本での成績を引用して弁解していたが、やはり彼女にも意地あったということだろう。
「ショットが曲がって、調子が悪かった」(不動)にもかかわらず、来年の出場権はほぼ間違いない成績を上げたのだから、実力者であることを証明した(決まった規定はないが、今年は一昨年の試合のトップ20位までが招待されている)
あるいは、今年の全米女子オープンや全米女子プロなどでは、「有名なのに勝てない」ウィや宮里が、逆に意地を見せることになるかも知れないが……。
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