週刊ゴルフダイジェスト「BACK9」の内容を、バックナンバーとしてほぼそのまま転載しています。
内容は紙雑誌掲載当時のものですので、詳細の状況等は変わっている場合があります。ご了承ください。

　ゴールドマン・サックスグループ（以下GS）が、傘下コースの売り出しに伴って、希望売却価格1億円で公募入札を実施した。

　法的手続きではおなじみの公募入札も、任意での売却ではめずらしい。その上、一部の人気コースでは18H1コースに50億円を超える値段が付く時代に、売却希望価格はわずか1億円。だれがいくらで落札するのだろうか。

　今回GSグループが公募入札で売却するのは、群馬県の沼田スプリングスCC。旧緑営グループのコースで、オープンは昭和48年、福島CCとならぶ旧緑営グループでは最古のコースだ。

　緑営グループのうち、阿蘇やまなみリゾートホテル＆GC（熊本）、佐渡GC（新潟）、鹿北GC（熊本）の3コースを経営していた東京リゾート株式会社、猪苗代GC（福島）を経営していた猪苗代高原リゾート株式会社、岐阜スプリングスCC（岐阜）を経営していた株式会社蘇水峡開発は破産手続きをとっている。

　このため、この5コースはすでにGSグループ入りせず、第三者に売却されている。

　沼田スプリングスも収益性の問題から、いずれ売却されることが再生計画案に盛り込まれていた。破産になった5コースと違っていったんGSグループに入ったのは、経営会社が他の主要コースを経営する緑営開発だったために、単純に破産手続きがとれなかったためだ。

　約2500名の会員は福島、新潟スプリングス三条、新潟スプリングス出雲崎、山形スプリングス、妙技スプリングス、児玉スプリングス、佐原スプリングス、玉川スプリングスの8コースに移転させ、パブリックで運営してきた。

　かつて800万円で沼田の会員権を買った旧会員からは、「ホテルも建てる、会員権相場も1500万円は間違いない、という評判で買った。移転先を選ぼうにも、児玉以外は新潟だ、山形だと行けない場所ばかりだったので、ほとんど選択の余地はなかった」というボヤキの声も聞こえてくる。

　もともと売却前提だったので、同コースはアコーディアへの運営委託も行っていない。

「買ってはみたが、経営状態が改善せず、いらなくなったから売却しようというわけではない。現在のところアコーディアで運営しているすべてのコースが黒字なので、売却予定のコースはもうありません」（アコーディアゴルフ）という。

　ところで、一般に法的手続きではなく任意でゴルフ場を売却する場合、内々に売却先候補を集めたり、どこからともなく売りに出されることを聞きつけ、アプローチしてきた候補者の間で入札を実施する事例は多々あっても、今回のような公開入札は珍しい。

　入札を仕切って売買の仲介に入るのも、ハーキュリーズ・リアルティなる不動産会社。法的手続きにアドバイザーとしてちょくちょく顔を出すような、有名なコンサルティング会社ではない。

　この不動産会社も「不動産業者としても、ゴルフ場のデューデリ（査定）業者としても聞いたことがない」（ゴルフ業界関係者）と言われ、「GSグループで以前から取引のある業者のうちの1つ」というのがアコーディアの説明だ。

　すでに4月27日に入札が締め切られているが、落札者の公表は「地主との交渉が成立して契約に至ってからとしたいので、早くても5月下旬」（同）になるという。

　同コースの敷地は、地元白沢村の社団法人高平公益社が100パーセント保有している。この社団法人、森林資源の維持培養と地区住民の福祉の増進を目的に、明治40年に設立された公益法人だそうだが、入札で選ばれた第一交渉権者は、この高平公益社と土地賃貸借に関する交渉を行わなければならない。

　多数の地主との交渉ではない上に、一応の下交渉はGS側で整えてあるとはいえ、万が一、第一交渉権者が折り合えなければ第二交渉権者が交渉を行うことになる。

「人気があるコースとは言い難いし、冬場はクローズになる。推定される売上から考えても、固定資産税や電気代、水道代を賄うのも大変そう。タダでも考える」などという辛口の評価を下す業界関係者もいるこのコース。

　入札締切直前には「相当数の問い合わせを受けている」（アコーディア）とのことだが、買値次第で採算を確保する自信があればこその落札だろう。結果に注目しよう。