アマチュアの世界ではほとんど見かけなくなった金属スパイク。しかしプロの試合では金属スパイクを履く選手をいまだに見かける。
あいにくの雨にたたられた日本プロゴルフ選手権で、ぬかるむ足元をざっとチェックしてみたところ、金属スパイクを履く選手が十数名いた。出場156名中1割近い。
また先週、三菱ダイヤモンドカップを開催した狭山ゴルフ・クラブは、通常の営業では金属スパイクを禁止しているため、マンデーが行われた月曜日に金属スパイクを履いている選手に声をかけたというが、「あまりに数が多いため、火曜の公式練習からは声かけをやめました」(コース関係者)というほど。
ブリヂストン、ダンロップ、ミズノなど大手メーカーのカタログから金属鋲を装着したシューズが消えて数年経つが、選手が金属スパイクを使い続けている状況をどう見るべきだろうか。
金属スパイク派の選手が理由に挙げるのは、まずグリップ力の違い。
「金属スパイク以外のシューズは滑りますし、ずっと金属スパイクを履いてきたから慣れています。そもそも芝を引っかくような歩き方はしません」
明快に答えてくれたのはベテラン水巻善典選手だ。昨年、廣野で行われた日本オープンでは、フェアウェイに砂が多かったため、アマチュアの中にも金属鋲を求めてサービスカーに駆け込む選手もいた。
アスリートプレーヤーはライの状態によってグリップに相当の違いがあると実感しているようだ。
「クルマに例えるとしたら、金属スパイクはフェラーリとかポルシェ。それ以外は軽トラみたいなもの。軽トラでコーナーを思い切り攻めたらひっくり返っちゃうでしょ」とユーモアまじりに話してくれた三橋達也選手は、金属スパイクを使いたいがために、今年からシューズの契約をフットジョイに替えた。
「とくに足を使う選手は、金属スパイクじゃないと下半身が安定しません。米ツアーでも超一流の選手が好んで履いているじゃないですか。それにグリップする分、身体を支えるためによけいな力を使わなくて済むので疲れも少ないです」(三橋)
それでは実際のところ、金属スパイクとソフトスパイクや最近流行のスパイクレスシューズとでは、グリップ力にそれほど差があるものなのだろうか。
「一般のゴルファーと鍛えているプロゴルファーとでは動かす荷重が違います。フラットなライではそれほど差は出ませんが、少しでも傾斜がある場所では金属スパイクが有利」(アクシネットジャパン・フットジョイ事業部マネージャー/田中武彦氏)
一方、契約選手ほぼ全員がデジソールに移行したダンロップでは、
「傾斜面を作ってテストした結果、デジソールの方が滑らない。さまざまな条件での総合的なグリップ力では金属スパイクに負けません」(SRIスポーツ経営企画室/山田照郷氏)と反論する。
ただ、われわれアマチュアにとって、求める性能はグリップだけではない。ビジネスユースでも軽量なウォーキングタイプが主流になり、月に1、2回程度のラウンド時だけ重いシューズを履けば当然足に負担を感じる。
実際、多くのアマチュアゴルファーがシューズ選びの第一条件として軽さを挙げているという調査結果も出ている。
また、機能を特化したアイデアシューズが増え、選択の幅はかなり広がっている。ブリヂストンの「Xスパイク」は、革底に近い足裏感覚が得られるプロ仕様のソフトスパイクシューズだ。
「ソールが硬めでねじれにくく、ミッドソールのクッションを削って芝の硬さや微妙な傾斜を感じられるようにした」(ブリヂストンスポーツ広報室/西尾須賀子氏)シューズで片足510グラムと重量感もある。
飛距離がアップするシューズに続いて登場したのは、スライスを防いでくれるという、アベレージゴルファーが飛びつきたくなるようなシューズだ。
ミズノでは、スウィングと反対方向に足がずれようとする動きに着目し、特定方向のグリップを高める「IGスパイク」を開発した。このシューズはソフトスパイクの向きを任意に変えることで、飛距離アップやスライス修正など目的にあった性能が得られる。
SLEルール導入もにらみながら続々と登場する高機能シューズ。金属スパイク派のプロがいつ履きかえるか、注目してみるのも面白い。
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