いま米国で売れに売れているのが「レンジ・ファインダー」と呼ばれる電子距離測定器だ。R&AとUSGAが今年1月からローカルルールで距離測定器の使用を認めたことが関係している。
距離測定器は、大まかにいうと3種類ある。
一つは、カーナビのようなもので、ゴルフカートに付いている衛星からのGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を使ったもの。もう一つもGPSを使った手持ちタイプのもの。
そして最も売れているのが、レーザータイプの手持ち測定器になる。ただ、レーザー測定器の欠点は、ドッグレッグなどで目標が見えないと測定ができないことだ。
また、GPSタイプのものは、グリーンまでの正確な距離は測れるが、その日によってピンの位置が変わるため、ピンまでの距離は分からないというマイナス面がある。
これまでは中小メーカーが、こうした測定器を作っていたが、ルール改正が引き金となり、ニコンなどの日本の大手メーカーも販売するようになった。価格面でもリーズナブルになったこともあり一気に人気が高まった。
数年前までは、レーザータイプの測定器は500ドル以上していたが、市場に参入したニコンの「レーザー500」は標準小売価格が299ドル。なかには250ドル前後で購入できるものもあり、そうした安さが人気に拍車をかけている。
あるメーカーは次のように予想している。
「現在米国では600万人のコアと呼ばれるゴルファーがいる。実際に測定器を持っているプレーヤーは7万5000人。まだまだ、市場は拡大する。昨年の3000万ドル市場が今年は6000万ドル、数年後には2億ドル市場にまで発展する」
一方、米国の地区ゴルフ団体では、この使用をめぐり紛糾している。
USGAの傘下にある60もの地区団体の中で、この距離測定器の使用を無制限に認めているのが、カリフォルニアゴルフ協会など22団体。条件付きで認めているのが12団体。その逆の全く認めないとしているのが、ハワイやフロリダのゴルフ協会など24団体となっている。
USGAやR&Aが認めたといっても、実際の判断はローカルルールとして地区団体に委ねたことからこのような状況になってしまったのだ。
とはいうものの、このことはコンペや公式競技で使用する場合に限られており、プライベートでゴルフをする場合は、ローカルルールで禁止されていようとも、測定器の使用は何の問題もない。
ただ実際には、ローカルルールでは禁止されているフロリダなどでも、よく売れているという。
こうしたものも仲間が使い始めて、それでスコアがよくなれば、自分も買って使ってみようと思うものだ。
ヤーデージブックなどが完備されたプロの試合などでは、練習ラウンドで測定器を使わないプレーヤーの方が少なくなっている。現在、競技会などで、測定器の使用を認めないことの意味が、ほとんどなくなってきている。
まもなく6月15日。全米オープンが開催される。今年は、名匠ティリングハーストが設計したウィングドフットGCで行われる。
このコースはヤーデージブックができる前のコースだけに、グリーンの大きさなどといった目の錯覚でプレーヤーの距離感を狂わせる罠が仕掛けられている。
そうしたことも、ゴルフの面白みの一つなのだろうが、距離測定器がもっと普及していけば、そんな設計家たちの妙も楽しめなくなる日が来るのかもしれない。
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