ジョン・デーリーの自叙伝が、アメリカで売れている。先の6月下旬のウォールストリートジャーナル紙のベストセラーリストでは、ノンフィクション部門で第7位。USAトゥデイ紙では、全ジャンルで23位というゴルフの本としては、異例(?)の売れ行きになっている。
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デーリーファンはいまだに多い
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「本の中には、嘘偽りない本当の人生について書かれているからね」とは、デーリー本人の言葉だが、なにしろ現役プロゴルファーの中では、もっとも波乱万丈な人生を送っているプレーヤー。
しかもブルーカラーのヒーローとして、ゴルフを知らないデーリーファンも多いのだから、その人物の自叙伝ということになれば読んで見たくもなるというものだろう。
「マイ・ライフ・イン・アンド・アウト・オブ・ザ・ラフ」というこの本。その題名どおり、人生のラフから抜けたと思ったら、再び捕まっているデーリー。
3度の離婚を経て、やっと生涯の伴侶が見つかったと思ったら、4度目の妻は、現在高い塀の中。ドラッグとギャンブルのマネー・ランドリング(裏金つくり)に関係したとかで、自ら罪を認めて5カ月の刑務所入りをしているのだ。
今月にも釈放になる予定だが、刑務所には1度しか訪れなかったというデーリー。本人は結婚生活をもとに戻したいと願っているのだが、妻のシェリーさんの方はどう思っていることやら、高い塀から出てこないことには分からない。
出所しても半年は、自宅近辺から離れられないということで、デーリーとともにトーナメント会場に行くことは出来ないし、1年間は保護観察処分というから、どこまで結婚生活が元通りになるかも分からない。
シェリーさんとの間には、「リトル・ジョン」と呼ばれている息子がいるが、この子が生まれたのは2003年で、シェリーさんが有罪となった5日前のこと。
つまり今のデーリーは、3歳の子供を抱えて、「パパとママの両方の役割をしなければならないというのは、非常にしんどい」(デーリー)ということになっているのだ。
大好きだったジャック・ダニエルには手をつけず、今はビールだけで立ち直った(?)が、アルコール中毒でリハビリセンターに2度目に入ったのも、子供が生まれた前後のこと。とはいえ子供はかわいいらしく、「主夫」をしながらツアーを転戦している。
自叙伝では73歳の父親、ジム・デーリー氏とのことが随所に書かれているが、この父親も4年程前にはアルコール中毒で2002年の7月4日、独立記念日に酩酊して、デーリーに弾丸の入った銃を突きつけたこともあった。
「あんなに怖かったことは、初めて」(デーリー)という事件を父親は泥酔のために全く記憶していないが、それ以降アルコールには手をつけていないとか。
父親によれば、デーリーを厳しく育てたということなのだが、子供だったデーリーに家でアルコールを飲むのを許したのもこの父親だし、逆にこの父親がプロゴルファーにするために、苦労してデーリーを育てたのも事実だ。
いずれにしても、デーリーほど話の尽きない人生も少ないはず。30歳前に全米プロと全英オープンの2つのメジャーに勝っているデーリーももう40歳。
昨年は米ツアーで約176万ドルを稼いでランキングで42位となっているが、今年は13試合に参戦して5試合で予選を通過しただけ。過去3試合に限っては、腰の痛みを訴えて、1ラウンドだけプレーして棄権を繰り返している。
妻や子供のことで、ゴルフどころではないのかもしれないが、それに故障まで重なっては、どん底に近いところまで来ている気がしないでもない。
とはいえ前妻やその子供たちへの慰謝料もあるから、試合に出ないわけにもいかないし、本が売れているのが唯一の救いといったところだろう。そんな同情票もあって、ベストセラーになっているのかもしれない。
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