クラシックの名器や限定商品、あるいはサイン入りといった特別なモノは別にして、市販されたゴルフ用品で中古品の取引価格がこれほど急騰した例はこれまでなかったのではないだろうか。いま、オデッセイのパター、トライホット#3がメーカー小売り希望価格の3倍にもなる10万円を超える異常な価格で売買されているのだ。
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レア物だけに値段が上がった
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トライホット#3は、4年前に#1~3が発売されたシリーズのうちの、ヘッド形状がピンタイプのパター。
しかし、メーカー希望小売り価格が3万5000円(税別)と高額だったためか、同じホワイトホットインサートのパターでは最も売行きが悪く、ほどなく廃版になってしまった。人気になったのは1万円台からある、他のホワイトホットシリーズに集中した感じだった。
こうして一般には評判にならなかった商品のためだろう、ネットのオークションサイトでも当初は半額程度で取引されていた。履歴をみると、今年3~4月には(保存状態による個体差はあるが)1~2万円台で落札されている。
また、中古ショップチェーンの大手でも、
「4月は1万2000円、5月に入って1万5000円になりました」(ゴルフパートナー)
「4月までは、買い取り8000円、売値1万4000円でした」(ゴルフ・ドゥ!)
といった状況だった。
ところが、このパターは主に男子ツアープロのパッティング上手の選手にユーザーを増やしていた。
理由は「ピンタイプという多くのゴルファーが慣れ親しんだヘッド形状なので、手を出しやすいのでしょうか、試しに使ってみると、バランスも打感も良く、転がりもいいことで評判になっていったのでは……」(キャロウェイゴルフ広報・松尾俊介氏)というのが、キャロウェイゴルフの見解だ。
そして、その広がりが今春、たまたま雑誌等で取り上げられたことから、まずマニアの間に探す動きが出てきた。
マニアの一部だけなら、モノ自体が流通していればそれほど高騰しないのだろうが、トライホット#3はもともと数が少なかった。なにせ、「5月始めで、全店(約230店)で10本しかありませんでした」(ゴルフパートナー)というパターである。
そのため、ネットオークションでは5月初旬に4万円台の値がつくと、その後一気に高騰、5月20日には10万円を超え、31日には15万円の落札の履歴もある。
どうやら、その3日前の28日に同じパターを使う横尾要がツアー優勝したことで、人気に拍車がかかったようだ。
6月に入るとオークションも落ち着きをとりもどしたものの、現在も7~8万円台は普通で、10万円を超えているケースもある。
「現在(6月22日調べ)、買い取り1万4000円、売値2万円ですが、在庫はまったくありません」(ゴルフ・ドゥ!)
またゴルフパートナーでは、6月に入ってからは3~4万円の値をつけていたが、現在は「値のつけようがない状態です」
というのは、現在在庫が1本しかなく、ネットでは10万円を超える値がついているが、そこまで上げていいものやら……。
「おそらく、ご注文いただいた時点で市場の状況をみながら、検討することになるかと思います」と担当者は戸惑い気味。
戸惑いはキャロウェイゴルフも隠せない。
「どうして今ごろ、というのが正直な思いですね」と前出・松尾氏。
パターの場合、売行きはツアーのトッププロが使うことで大きく違ってくる。ところが、プロにとってパターは他のクラブとは違い、新しいモデルだからといってすぐに手を出せる道具ではない。
そのため、ツアーへの広がりは遅れて徐々にやってくる。当然、一般への波及もタイムラグは避けられないのだろう。それが今のブームにつながっている。
とはいえ、中古ショップ等で評判だからといって、誰にでも合うパターでないことは言うまでもない。この点、ゆめゆめご油断なく。
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