先頃行われた全米オープンはP・ミケルソンの敗退、J・オギルビーの優勝で幕を閉じたのは既知の事実だが、この試合、実はもう一つのビッグネーム対中堅の戦いがあった。クラブメーカーのテーラーメイド、キャロウェイというビッグネームに対して、勝利をものにしたのは、オギルビーの契約する中堅、コブラのドライバーだった。
|
大復活の兆しのコブラ
|
コブラといえば、90年代、ドライバーやアイアンのトップブランドとして知られたメーカーだったが、創業者の1人でもあり自身メーカーの広告塔でもあったグレッグ・ノーマンが試合で勝てなくなり、同社の株を手放してタイトリストに買収されたことから、いつの間にか、トップブランドの地位から転落してしまった。
親会社のタイトリストは、ドライバーの975シリーズで、一時は、コブラにとってかわるような勢いを見せたが、ここ数年、アメリカのドライバー市場は、テーラーメイドとキャロウェイ2大ブランドの天下となっていた。
そうした状況の中で、3年間の間、PGAツアーの契約プロを持たなかったコブラは、ここに来て政策を転換し、若くて才能あると思われるプレーヤーを積極的にリクルートするようになった。
現在、コブラの契約プロには、FBRオープンに優勝したJ・B・ホルムス、ヨーロッパツアーで6勝しているイアン・ポールター、プレーヤーズ選手権で3位となったカミリオ・ビレガス、そしてJ・オギルビーと、しっかり押さえるところを押さえているのだ。
しかも、コブラにとって、思いもかけない僥倖だったのは、オギルビーが、今回、キングコブラのXスピードドライバーを使用していたことだ。
WGCのマッチプレーで優勝した時にはアイアンこそコブラを使っていたが、ドライバーはテーラーメイドのr7クワッドを使っていたために、宣伝に使うことが出来なかった。
コブラとしては、この6月にクラウン部分にカーボンを使用したHS9Xという名のコンポジットドライバーを発表し、ドライバー市場でのビック3の地位を確立させようという時期とまさに重なっていたのだ。
ある意味では、コブラの創業者の一人であった同じ豪州出身のG・ノーマンを尊敬するオギルビーが、全米オープンで優勝したのは、コブラの第2黄金期の到来を予感させるものだったのかもしれない。
実際、ゴルフデータテック社の調べでは、コブラ社のドライバーにおけるマーケットシェアは、5年前には、わずかに2.5パーセントだったものが、今では、 11.7パーセント(現在米市場で2桁台のシェアがあるのは、テーラーメイド、キャロウェイ、コブラの3社だけ)にまで戻しているのだ。
が、実のところコブラがここまで伸びてきているのは、ツアープロのおかげばかりではなかった。
オギルビーが使用していたスピードドライバーは、アメリカの標準小売価格ガ299ドルで、他のメーカーの主要ドライバーに比べて100ドルほど安い。この価格メリットで売り上げを伸ばしていた。
ところが、新たに発売されたHS9Xは、399ドルという高額設定。それがどういう評価を得るかが注目されていた時期に、オギルビーが優勝してくれたのだから、コブラとしては、これ以上望むべくもない、最高の投資をオギルビーにしたことになったというわけだ。
ただ、これまでは、安いから売れていたとされていたコブラが、高額設定のクラブを販売して、売れるかどうかといった疑問もある。
またカーボンクラウンのコンポジットドライバーは、米国では全般的に人気が今ひとつで、せっかくのチャンスを、コブラが無駄にするのではないかとの、声も聞こえてくる。
ともあれ、コブラの復活によってクラブメーカーのシェア争いはますます熾烈を極めてくるのは必至。テーラー、キャロウェイの牙城をどれだけ崩すことができるか、注目したい。
|