ホイレークが、全英オープンのローテーションコースに戻ることになりそうだ。39年ぶりにロイヤルリバプールGC、通称ホイレークで開催された先の全英オープン。試合前、試合中を含めて、コースに対する≪批判≫の声が、聞こえていたが、優勝したタイガー・ウッズの涙が、そんな批判を、すべて洗い流してしまった。
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タイガーの活躍と涙がすべてを流し去った
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「委員会が決めることで、決定したわけではないが、このコースに戻ってくるのを、妨げる理由は何もない。今年のホイレークはこれまで開催したコースの最高の一つに数えることができるだろう」と手放しで、絶賛するのは、R&Aの最高責任者であるピーター・ドーソン氏。
地元紙などの中には、全英オープンのローテーションコースに組み込まれ、10年以内に必ず戻ってくるなどという記事も見られるほどなのだ。
もともと、ホイレークは、約74万平米という狭い土地に作られ、住宅地に囲まれていることから、OBの白杭が目立つコースで、全英というメジャーには向かないのではないかとされていた。
しかも、数万人のギャラリーを迎えるための道路事情も悪く、全英のローテーションコースからはずされていた。
しかし、こうした問題に関しては、数年前に同クラブが、隣接地を購入したり、道路整備が改善されたことで、何とかクリアしていた。
しかし、コースは、英国を襲った熱波のために、ラフやフェアウェイの芝が死にかけ、サバンナのような様相を呈していた。グリーンもフェアウェイも固く、速くなっていたのだ。
通常、試合直前の水曜日に、気分をほぐすべく近隣のコースで調整をするフィル・ミケルソンは、「近くでは、これほど固いフェアウェイのコースを見つけることができない」とかでプレーを取りやめた。ジョンレノン空港の滑走路で練習してはどうかなんて声も出たほど。
これに対して、ドーソン氏は、「固く速いコンディションは、私たちが望んでいたもの」と語る一方で、煙草や葉巻を吸うJ・デーリーやD・クラークに、火事にならないように、注意するように促したほどだった。
それが、水曜日の夜の雨によって状況が変わった。
「練習ラウンドの方が、はるかにグリーンは速かった。でもR&Aは、これ以上水をまかないと思うね。こんなに多くのプレーヤーがアンダーパーを出しているから」とT・ウッズが初日に語っていたように、選手は試合直前の雨に救われた格好だった。
ただ、フェアウェイやラフの灌水施設が十分ではないという批判は、金をかければ何とかなる話なのだろうが、アンダーパー続出に加えて、「総合的にゴルフの技術がすぐれたものが優勝する」というメジャーのコンセプトが、崩れてしまったことに対する批判の声は、根強くあるのも事実だろう。
英国のガーディアン紙は「全英はタイガーにドライバーのテストをさせるのを失敗した」という記事を掲載したが、実際、タイガーは最終日、一度もドライバーを手にすることなく、優勝している。
コーチのハンク・ヘイニーに言わせると、
「ティショットでロングアイアンを使う戦略は、練習ラウンドで2ホールプレーした時点で決めた。バンカーに入れたら出すだけになる」ためと、「タイガーのドライバーの調子が今ひとつだったのと、アイアンの調子が最高だったために」ティショットを、バンカーの手前に落とす戦法を取ったのだ。しかも強風の中で「ウェッジの高い弾道でピンを狙うのは難しい」(ウッズ)
ということで、転がして、グリーンに乗せる作戦を取った。
この戦法が試合前夜の雨で奏功、タイガーの勝利につながった。しかし、ドライバーを使わなくても勝てるというメジャーのコースには、やはり問題があるといえるだろう。
ただ、R&Aにすれば、ホイレークは聖地セントアンドリュースと並んで、最も視聴率が稼げるタイガーが優勝できるコースというコースということになる。
しかも今回は、南アのE・エルス、スペインのS・ガルシア、日本の谷原も優勝争いに加わるという展開。世界中にTV放映権を売るR&Aにすれば、願ってもない試合展開だった。
この全英の経済効果は120億円にもなったという。終わりよけばすべて良し。どうやら、ロイヤルリバプールのローテーション入りは間違いがなさそうな気配だ。
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