リコールというと、車のリコールがすぐイメージされるが、今回ゴルフクラブのリコールが発表、実施された。8月初め、ヨネックスは経済産業省にリコール(無償製品回収と検査・交換)を行う旨を届け出、4日から実施している。該当商品は昨年4月に発売されたサイバースター・ナノブイのロフト角11度ドライバーで、その一部に高反発規制であるSLEルールの制限値を超える商品が混じっていたため。しかし、今回のリコールに至る過程には、ちょっとした疑問も……。
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アベレージ向きの11度がリコールに
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サイバースター・ナノブイドライバーといえば、今年度のゴルフダイジェスト社クラブ・オブ・ザ・イヤーを受賞した人気クラブ。ところが、そのうちのロフト角11度の一部に、SLEルール制限値を超える商品が混じっていることが、R&Aの調べで判明した。
SLEルールは08年から実施されるヘッドの高反発規制で、ペンデュラムという計測器で製造誤差を含めた制限値257μs(100万分の257秒)を超えるクラブは違反となり、使用が認められなくなる。
サイバースター・ナノブイはR&Aにより、同ルール適合クラブとして承認されており、11度ドライバーも適合クラブであった。
ところが、R&Aでは新製品の承認申請以外でも、常時用具のテストを行っており、そのなかでナノブイドライバーにSLEルール制限値を超えるクラブがあることを見つけたことがことの発端だ。
R&Aは今年6月6日にその旨をヨネックスに通知。それを受け、ヨネックスでは翌7日から同シリーズの全モデルを改めて検査。7月になってこのうちの11度ドライバーに制限値オーバーがあることがわかり、同10日からその販売中止と市場在庫の回収を開始した。
さらに、同18日にはイギリスにR&Aを訪ね、この問題について協議。そのなかで11度ドライバーに制限値を超えるクラブが混入していることを確認。そこで、同28日に11度の修正サンプルをR&Aに再提出し、SLEルール適合クラブの承認を改めて受けた。
そのうえで、ユーザーに渡った全量は同社が回収、検査し、基準値(239μs)を超えるクラブについては無償で交換するリコールの実施を決めた。
同社によれば、これまでの約3600本が販売されたが、うち約600本はショップなどから回収・検査済で、今回リコール対象になるのは一般に渡った約3000本。
「そのうち10~15パーセント、場合によってはもうちょっと多い割合で基準値超過のクラブがあると予想されます」(企画宣伝部・根岸理恵さん)とのことだ。
また、今回のミスはフェースの成型・研磨の工程において、設計仕様値を超える研磨を行ったためという。
11度ドライバーは、9度、10度に比べてフェース面が大きい。その分、フェースの重量が増すため、重量調整上、フェースをより研磨しなければならなかった。その一部でフェース厚が設計仕様以上の薄さとなり、反発係数が増す結果となった。
しかも、フェース厚はヘッドを組み立てる前に検品するのだが、その際にはフェース面の中央部5箇所の検査だった。ところが、実際にはその外縁部が薄くなりすぎたための、反発係数の増加だった。
それにしても、そもそものR&Aからの指摘だが、基準値超でさえ全体の10~15パーセントと予想されるのに、R&Aはそれより数が少ないはずの制限値超のクラブをテストしたことになる。これは偶然なのか?
一説にはヒットしたクラブゆえ、ライバルメーカーがR&Aに密告したのでは? とうがった見方もある。
もともと、ヨネックスは世界に先駆けてカーボンアイアンを開発するなど、その革新性、先進性の高いメーカーではある。それゆえに、ライバルメーカーには目の上のたんこぶと映ったのか?
それに対し、「その可能性はないと思います」と即座に否定するのは、かつて住友ゴムでクラブ開発を担当したクラブデザイナーの松尾好員氏だ。
松尾氏によれば、発売後1年もたってR&Aに通告しても、メリットはほとんどない。その結果、自社クラブが売れるわけでもないし……、という。
それ以前に「多くのメーカーの開発陣を知っていますが、ライバル社の足を引っ張るような人はいませんよ。自分たちの研究に一生懸命で、そんなヒマありませんから」と語る。とすれば、恐るべし、R&Aの調査能力! ということだろうか。
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