先週、スポーツ新聞の一面を連日独占したのは「佑ちゃん」こと、早実高校野球部の斎藤佑樹投手だった。彼を国民的アイドルに引き上げたのは、20日と21日に繰り広げられた駒大苫小牧との引き分け再試合の決勝戦だった。しかし、その2日間の熱戦に振り回されたゴルフ関係者もいた。
早実と駒苫による2日間の決勝戦は、まさに高校野球の球史に残る試合だった。テレビ中継の視聴率は、20日がNHKで平均29.1パーセント(関東地区、ビデオリサーチ調べ。以下同)、テレビ朝日4.6パーセント。
平日の翌21日もNHK23.8パーセント、テレビ朝日5.5パーセントで合計30パーセントに迫る驚異的な数字を記録した。
これだけ世間の耳目を集めたのだから、当然、ゴルファーも注目していた。なかでも熱い視線を送っていたのが、苫小牧を中心とする北海道のゴルファーだった。
札幌地区でのテレビ視聴率は、両日とも40パーセントを軽く超える人気。もちろん、ゴルフ場でも「テレビの前は、試合の間ずっと20~30人の人だかりができていました」(苫小牧・桂GC)
同じく苫小牧の北海道GCでは、「日曜日はクラブ競技があったのですが、ラウンド後は皆さんテレビに釘付けになって、試合が終わるまで表彰式ができませんでした」と当日の混乱ぶりを語る。
さらに、この両日はどのコースもキャンセルがあって当たり前だったようで、「ええ、うちも20日に2~3組のキャンセルがありました」(苫小牧CCブルックスコース)など、取材したほとんどのコースでキャンセルがあったという。
また、前出・北海道GCでは「早いスタート時間に変更された組が数組ありました」と語る。
北海道では多くのコースが18ホールスループレーなので、8時にスタートすれば午後1時前にはホールアウト。それからクラブハウスでも自宅でも、ゆっくりテレビ観戦できるというわけだ。
「当日は、キャディマスター室が大忙しでした。スタートするお客さん、戻られたお客さんがともに『どうなった?』って経過を聞かれたもので……」(桂GC)
だが、マスター室にはテレビもラジオもないため、スタッフが逐一、事務所に連絡を取って最新の経過を入手するはめになった。
そのほか、コース上の全カートに「高校野球にご興味のない方には申しわけございませんが、現在の状況をお知らせいたします」と、一斉放送で試合経過を知らせたゴルフ場(サンパーク札幌GC)もあるなど、この2日間は道内のゴルファーの目ははっきり甲子園に向けられていたようだ。
20日午後4時半過ぎまで続いた延長戦に最も影響を受けたゴルフ関係者といえば、女子ツアーの新キャタピラー三菱のテレビ中継だろう。
ともと午後4時からの放送予定が、甲子園大会の中継が延びたために、結局、深夜1時30分からの放送になった。
ところがこの大会、甲子園決勝の中継延長で、予定通りに中継できなかったのは今回が初めてではない。2年前にも同様のことがあった。そのときはトーナメント中継が30分短縮され、1時間番組に変更されたのだ。
しかし、最終日の模様を1時間枠で紹介するのは、土台無理な話。大会概要や賞金、副賞、スポンサー等の紹介、そして表彰式の模様は欠かせないから、結局は番組が始まるやすぐに優勝の行方が決まるといった構成になってしまった。
おかげで視聴率も2パーセント台。当時は、宮里藍人気でどのトーナメントも軒並み6~7パーセントの視聴率を獲得していただけに、シーズンでも際立って低い数字となった。
そんなことがあっただけに、今年は「会場では、主催者の関係者がコースと甲子園、両方の展開をにらみながらソワソワ。最後は甲子園のほうに向かって『お願い、早実、サヨナラゲームで早く終わらせて!』って祈っていました」(大会運営関係者)
しかし、その祈りもむなしく、甲子園の攻防は15回まで続いてしまった。トーナメントは終盤に来て上位陣のスコアが大きく変動する面白い展開だっただけに、主催者もテレビ関係者も、予定どおりに全国中継できなかったことを残念がっていた。
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