「アダムスゴルフといえば、フェアウェイウッドのタイトライズで、プロや上級者を中心に一世を風靡した米国ブランドだ。日本でのブームは下火となったが、おひざ元の米国では、トム・ワトソンらやPGAツアーでも愛用する選手が多く、シニアや女性ゴルファーの間で人気が広まっている。
そのアダムスゴルフが日本に≪再上陸≫した。日本における製造・販売権を獲得したのは低価格路線のアメリカン倶楽部を展開するエー・エム・シーだ。
同社は元々リョービなどのOEMを手がけるクラブメーカーだったが、リョービの撤退にともない、製造直売の格安クラブを売り物にするアメリカン倶楽部をいまから6年前に立ち上げた。
東京青山の第1号店を皮切りに、毎年約10店ペースで出店を重ね、売上げも20パーセント程度の急成長を続けてきた同社が、新たな海外ブランド獲得に走ったのである。その狙いはどこにあるのだろうか。
「2年前から、既存のブランドと相乗効果が期待できるブランドを探していました」(エー・エム・シー取締役営業本部長/安部良典氏)
候補にあがった舶来メーカーの中で諸条件が合致し、白羽の矢を立てたのがアダムスゴルフだった。
「日本でのブランドイメージが保たれていること」(安部氏)が第一の条件だった。利幅を抑えた低価格路線で勝負する同社だけに、値崩れは致命的。安売りイメージのついた商品は扱えない。アメリカン倶楽部のモデル同様、直営店のみで販売する大きな理由もそこにある。
「直営店ならば価格の統制がとれるし、リアルタイムで販売状況を把握できるため、在庫管理がしやすいというメリットもあります」(安部氏)
アダムスゴルフは、米国では決して低価格ブランドではないが、日本ではアメリカン倶楽部流の低価格で販売される。
フラッグシップモデルとなるレッドラインRPM460Dコンポジットドライバーの価格1本2万9400円は、売れ筋ドライバーの市場価格の半値以下。
最量販モデルのGT-3ドライバーは1万円を切る。日本仕様としてマミヤオーピー製シャフトを装着しながらここまでの低価格を実現できたのは、まさに製造直売ならではだ。
在庫の削減はアダムスブランドでも徹底されている。たとえばレッドラインRPM460Dの場合、米国ではロフト5タイプ、シャフト4タイプ、フレックス4タイプが展開されている。
しかし日本仕様では、ロフトは10.5度のみ、シャフトも1タイプでフレックスはSとRに絞り込まれている。試打クラブもおかない考えだ。
「50店舗に試打クラブをおけば当然価格にはね返ります。いまどき試打もできないなんてとお客様から言われることもありますが、そこは割り切っていただきたいところです」(安部氏)
同社では、初年度販売目標として、ドライバー3万本、アイアン5万本などで売上げ12億円を掲げている。中堅メーカー1社に匹敵する規模だが、
「既存の売れ筋商品でも2万本は売れていますから、決して不可能な数字ではないと思います」(安部氏)と自信を見せる。
「プレー料金やウェアなどが安くなったのに、クラブやボールだけがバブル時代のままというのはおかしい。よく当社のクラブがなぜそんなに安いのかといわれますが、材料も製法も変わらないので、他社が高すぎるとしか言いようがありません」(安部氏)
同社が投じた2個目の石は、はたして低価格化の波を業界に広げることができるのだろうか。
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