女性ゴルファーの増加がゴルフ業界を活性化させている。コースや練習場、さらにはショップなどで女性を見かける割合が多くなり、メーカー各社はこぞって女性向けギアやグッズを販売。男性客にも大きな影響力を持つ女性の取り込みに懸命だ。その実態に迫る。
女性ゴルファー増加を数字で把握するのは難しい。
「個人会員は年々増えていますが、正確なところはつかんでいません」と、日本ゴルフ界を統括する立場にあるJGA(日本ゴルフ協会)が言えば、行政も含めた他団体も似たようなもので、男女別の統計が取られていないところがほとんどだ。
唯一、日本パブリックアマチュアゴルフ選手権(以下パブ選)を主催する日本パブリックゴルフ場事業協会の競技の推移が女性ゴルファーの増加を物語っている。
基本的にゴルフ場のメンバー以外の参加が難しい各地区アマや日本アマと違い、誰もが気軽に参加できるパブ選。
平成12年まで女子の大会は東西中部の3地区大会までしかなく、全国大会は行われないほどだった。
だが、女性ゴルファーが増え平成13年から女子単独開催で全国レベルまで大会が行われるようになり、その参加者は年々増加。第1回大会は参加数795名だったのが、今年は1192名とと約1.5倍に増えている。
また、株主会員制の相模原GCでは、200名限定だった女性会員を40名増やすことを決定。
この理由は「人数が制限されているため、株だけ持って空きを待っている女性が増えてしまったため、理事会が決定した」と、コース側では話す。
来年日本オープンが行われるこの名門コースではロッカールームを含めたクラブハウス改造も俎上にのぼっている。これも女性パワーを受けてのものという。
この動きは、練習場ではもっと顕著な傾向が見られる。
多くの女子プロが練習に訪れることでも知られる東京・江戸川区のロッテ葛西では「女性客は確実に増えています」(鈴木支配人)と明快な回答。
7月30日に実施したアンケートでは、女性客の割合が22.3パーセントと予想以上に高かった。
さらに週末には、1日平均5組程度「ゴルフは初めて。どうしたらいいんですか?」という雰囲気の若いカップルが訪れるという。
明らかな底辺拡大。最初はハイヒールとビーチサンダル履きで、レンタルクラブ、シューズだったカップルが「2~3回目にはウェアをバッチリ決めて、クラブもバッグも揃えて来て下さる事も多い」(同支配人)という現状は、女性が男性をリードする若いカップルによる市場拡大を如実に表している。
これに伴い、同練習場では、無料のルール、マナー教室を開いたり、コースデビューをサポートするなどゴルフ人口拡大を積極的にはかっている。
もちろん、各メーカーも黙ってはいない。ミズノでは、レディースゴルフウェブサイトを開設し、久保樹乃、兵頭慧美ら女子プロが全国を回って女性ゴルファーをサポート。クラブ選びやウェアのポイント、化粧のコツなどを教えてくれる上にレッスンまで受けられる。
SRIスポーツでは、売れ筋のゼクシオレディースモデルの販売数が2年ごとの統計で約10パーセントづつアップ。「じわじわと増えています」(広報部)と実感を抱く。
さらにブームの火付け役、宮里藍を抱えるブリヂストンスポーツも、2003年からクラブを女性専用に設計。クラブフィッティングなどを行うゴルファーズドックを女性専用で実施して、これに備えている。
業界を引っ張る女性ゴルファーの増加。原因を分析してみると、経済の好転はもちろんのこと、宮里藍世代の出現で「私にもできる」ムードが若者たちに広がったことが大きい。
さらには、定年間近の熟年カップルで、男性が女性を引っ張り出すケースもあり、まだまだ女性ゴルファーの増加は右肩上がりの気配。ゴルフ界の将来へのカギは女性が握っているといっても過言ではない。
|