小泉構造改革の産物とも言われる、消費の二極化により、最近の市場は商品の低価格化が進む一方で、高額な高付加価値品の売れ行きも伸びて、一部に≪プチバブル≫の声も聞かれる。そんななか、7月にマルマンが発売した、超高額の「マジェスティ」35周年記念モデルが完売の勢いだ。高価格帯市場をリードする「マジェスティ」だが、どこにそのパワーがあるのだろう。
|
高ければ高いほど売れる!? セレブ人気のマジェスティ
|
会員権市場では名門クラブの取引価格が上昇。小金井CCは1年前の5000万円前後から、いまや億に届きそうな勢いだ。
クラブではドライバー1本が20万円以上もするプレミアム価格帯で、マルマンの「マジェスティ」が堅調に売れている。
この7月に限定商品として売り出した「マジェスティ」35周年モデルの各アイテムが、いずれも完売の見込みという。
ドライバー1本35万円(税別、以下同)、アイアン8本セット100万円、パター(2種)各10万円、キャディバッグ35万円、カシミアジェケット20万円。フルラインナップで揃えると200万円いう驚きの価格だが、今のセレブには問題ないのだろう。
「うちではドライバーが15本余り、アイアンセットも5~6セット売れました。予想以上の売れ行きで驚いています。それほど力を入れてセールスしたわけではなく、お客さんの方からお求めにいらしたという感じでした」(新宿・伊勢丹ゴルフクラブ売場)
マルマンに聞くと、既に「クラブは80パーセント、そのほかも50パーセント前後売れており、完売の見通し、8月末現在で8億円の売り上げとなっています」(広報担当・都文男氏)という。
ちなみに、今回の販売数はドライバー500本、アイアン500セット、パター各350本、バッグ50本、ジャケット150着となっている。
人気の理由を、同社は「まず、絶対にいい商品ということです」と商品自体の性能の高さと仕上げの良さをあげる。
例えば、ドライバーは振りやすさを徹底させた設計で、ヘッドスピードの遅いゴルファーでも飛距離の出る高反発ヘッドで、石を打ったくらいでは傷つかない特殊な仕上げがなされている。つまり、高級感がいつまでも失われないということである。
しかし、同社の調べでは、購入者の多くは発売後1週間の間に注文した人という。前出・伊勢丹の実情からも分るように、商品力というよりも、多くは発売前から決めていたファン、既ユーザーのリピートが多いようだ。
実は、マルマンでは、マジェスティの購入者を「オーナー」として会員登録(その数2万人以上)、「オーナーズニュース」という会報を発行したり、年1回親睦コンペを開催するなど、アフターケアでもオーナーの自尊心をくすぐり、そのステータスを保証するマーケティングを行っている。
「マジェスティで満足されていたオーナーさんが、限定商品ということで期待感が高まり、また我々売場も高額の売れる商品ということでより力が入った相乗効果があったのかも」と前出・伊勢丹の担当バイヤーは分析する。
ファッション分野などでよく見られる、実績のある高級ブランドの限定商品パワーだったのだろうか。
ところでこのプレミアム価格帯だが、セイコーエスヤードの「アクロクラス」が今年4月に発売した新モデル(ドライバー25万円、アイアン6本セット48万円)がボーナス商戦時に一時品切れになるなど、マルマン以外にも堅調なクラブがある。
本間ゴルフでも「ベレス」に高級シャフトを装着することで、ドライバー20万円、アイアン8本セット120万円という高額商品が用意されている。もちろんニーズがあってのこと。昔からの本間ファンに、それくらいのセレブがいてもうなずける。
また、ジャンボ尾崎が契約するGMAブランドからは、ジャンボモデルの限定アイアンセットの発売が予定されている。価格は100万円ともいわれるが、こちらは同社によれば発売時期は「まだ未定」とのこと。
車の世界では一部に、なんでもいいから一番高い車でオプションもすべてつけてくれというお客がいると聞くが、ゴルフでもこういう人が少なからずいるのかもしれない。
ところで、この価格帯は≪ニッチ≫というには大きな市場と思われるのだが、頑張っているのは中小メーカーばかり。例えばブリヂストンの「アクセス」が振るわないなど、大手に元気がないのが不思議なところだ。
|