新石垣空港建設に伴い、9月末で閉鎖が決まっている全日空グループの石垣島GCの会員36名が、閉鎖差し止めを求める仮処分の申立を行い、最後の抵抗を試みている。石垣島GCは太平洋クラブ系列のコースとして昭和50年にオープン、沖縄本島では昭和40年代に沖縄CCなど5コースがオープンしていたが、今やゴルフリゾートのイメージが強い宮古島にはまだゴルフ場がなかった時代だったため、南国リゾートの離島コースとして注目を集めた。
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どうなる? 石垣島GC
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昭和63年に全日空グループに売却されてから今年で丸18年になるが、1月、2月でも青い芝の上でプレーが出来ることから、長年根強い人気を誇ってきた。
一方、現在の石垣空港は、周辺が市街化して騒音が問題になっている上、1500メートルの滑走路が1本あるのみで、2000メートル級の滑走路がないのが現状。
従って、大型ジェット機のみならず、貨物のコンテナ輸送が可能な中型ジェット機の運航も無理。
このため、八重山の農水産物を直接東京や大阪などの大消費地に運ぶことができず、那覇でいったん積み替えて運ばざるを得ず、八重山の産業振興発展に支障をきたしているという。
やむなく150人乗りの小型ジェット機で運行しているが、乗降客数の調整や貨物の搭載制限が行われているのが現状だ。
現在の滑走路は南は市街地、北は遺跡と、延長が出来ないなどの事情があり、移転先を探すことに。
が、昭和50年代後半以降、二転三転する建設予定地を巡っては様々な経済事件も発生。最終的に現在の石垣島GCのコースにほぼ覆い被さる形で事業決定したのが平成12年4月。
その後、具体的な計画立案や予算取り、環境問題対策、国の許認可取得などの作業で6年間が経過。コースを経営する(株)石垣全日空リゾートが会員に対し、今年8月末の閉鎖を通知したのは今年2月のことだった。
会社側が、8月末までに預託金額面全額の返還をする、としたのに対し一部会員が反発。
「新空港予定地として正式決定してからこれまで、会社側からは何の説明もなかった。プレー環境が奪われることについて、会社側の配慮があまりにも足りない」(オープン当時からの会員である泉水朝繕氏)として会社側に対し内容証明を送付。
8月中旬、会員有志36名でゴルフ場閉鎖差し止めの仮処分の申立を行ったが、那覇地裁からは棄却決定を受けてしまった。現在福岡高裁に即時抗告の申立を行っており、9月20日ごろには結論が出る見通しだ。
だが、空港建設という公共性が極めて高く、しかも6年前に正式決定となっている事業だけに、圧倒的に不利であることは否定出来ない。
8月末予定だったコースの閉鎖は、着工が10月にずれこんだことから9月末まで延長されたものの、これまで同様のプレー環境を提供してもらえる状況にはまったくない。
当然、会員もコースと空港建設予定地が大部分被っていることは、事業決定したときから承知しているが、「会員からはこれまで特にこれといった要望はなかった」とコース側は言い、会員側は「会員にプレーをさせる義務を全う出来なくなる会社側が、積極的にアクションを起こすべきだった」と、両者の言い分は真っ向から対立する。
「平日の午後、仕事が終わってからなど、年間250回はプレーする我々にとって、小浜島や宮古島まで出かけないとゴルフ場がない、ということは、土・日しかプレー出来なくなることを意味する」(泉水氏)という。
会社側では「全日空ホテル併設のショートコースについては、従来から石垣島GCの会員特典として認めている割引き利用を、コース閉鎖後もむこう3年間は従来通り認めるし、ゴルフ場開発に係る規制緩和を沖縄県に要請したりもしている」という。
石垣島に新たなゴルフ場建設計画が浮上しているのは事実で、規制緩和が実現すれば、新たなコースが誕生する可能性がないわけではないが、実現までには相当の時間を要することは間違いない。
観光資源としても一定の存在感を持っていたはずの同コース。建設予定地に決まってからのこの6年で、もう少し何か出来なかったのか、との思いを抱くのは会員だけではないだろう。
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