ゴルフツアーも後半戦に入り、賞金王レースもヒートアップする頃、トーナメントの舞台裏ではもう一つの戦いが佳境を迎えている。2007年の「リシャフト市場」で主導権を握るべく、シャフトメーカー、クラブメーカーが入り乱れてプロモーション合戦が繰り広げられている。
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「価格以上の性能」というロッディオ
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現在のリシャフトブームのさきがけとなったのは、フジクラのスピーダーで、ピーク時には年間130万本が出荷され、まさにネコも杓子もといったブームを巻き起こした。そして、スピーダーと同じく、ツアーでの実績を元に急成長したグラファイトデザイン。
2強の時代がしばらく続いた後、割って入ったのが4軸構造を売り物にするアクシブ(マミヤ・オーピー)やOEMトップメーカーとして満を持して投入したディアマナ(三菱レイヨン)だ。
現在は、フジクラ、グラファイトデザインに、世界のトップ10にターゲットを絞ったプロモーションでも大成功を収めたディアマナを加えた3強がしのぎを削っている。
しかし、3強の地位も安泰とはいえない。これらシャフト専業メーカーの牙城を崩しにかかっているのは、クラブメーカーだ。
ダイワ精工のロッディオが、この10月1日にデビューする。同社は、以前からシャフトを自社生産してきたが、ロッディオに関しては、当初から他社クラブへの採用も視野に入れて開発されたシャフトだ。
今回、発売されるのは、リストワークを使うゴルファー向けのWAとボディターンタイプのBAの2タイプで、いずれも4方向カーボンに垂直方向のステッチングを加えた独自の5軸(ペンタクロス)構造が特色で、重量別に合計6種類のラインナップ。
価格は4万2000円と高額な部類いに入るが、世界ナンバーワンブランドともいわれる釣竿で培った技術を生かし、仕上げにも通常の3倍の工程をかけるなど、
「従来のシャフトと比べるともう少し上に価格設定したいところですが、使う人が限られないようプレミアムブランドの上限に合わせました。品質的には価格以上のものになっています」(ダイワ精工シャフトマーケティング担当・篠田賢一氏)と自信を見せる。
製品が完成したからといってすぐに流通させるのではなく、事前のプロモーションで知名度を高めていく手法は、ディアマナの成功以来の大きな流れといってもいい。
ロッディオは男女ツアーのほか、先行発売という形でプロモーションを行ってきた。今年の春から一部ゴルフ工房に限定して販売されたのはW6TとW7Tという2種類のプロトタイプ。
「先が暴れない。叩けるシャフト」(ゴルフメッセ・川上富雄氏)と評判が高まったタイミングでの正式発売というわけだ。
また、常時在庫店は36店舗、取り寄せ対応店が約100店舗に限定されるが、これも、「口コミ効果を狙って、トップアマにも影響力のあるお店を選んだ」(前出・篠田氏)ためとか。
同時に、競争の激しいシャフト市場で値崩れを防ぐことも目的の一つのようだ。
04年9月にクラブメーカーによるシャフト単体発売の口火を切ったアーマック(本間ゴルフ)、今年4月に9種類25タイプの幅広い品揃えでリシャフト戦線に加わったクワッド(ミズノ)、そして契約選手のシャフトを自社ブランドに一新させ市販の機をうかがうリアックス(テーラーメイド)と、高反発規制でシャフトが見直されていることを背景に、クラブメーカーの鼻息は荒い。
だが、迎え撃つ格好となるシャフト専業メーカーも負けてはいない。昨年のこの時期、ツアーで使用率トップとなり、その結果、ほとんどのクラブメーカーにカスタムシャフトとして採用されたグラファイトデザイン。
今年は同色のグリップを用意するなど、新しいプロトタイプのプロモーションを精力的に進めており、男子ツアーではすでに多くの選手がこの緑色のシャフトをバッグに入れている。
また、フジクラも、完成したてのランバックスのニュータイプ7Xをフジサンケイから持ち込み、藤田寛之らが早速テストを始めるなど、来年1月の発売に向けて積極的なプロモーションを開始した。
ほかにも、女子ツアーで人気の高いディアマナの軽量プロトタイプが、新ブランド「バサラ」として発売予定で、シャフト専業メーカーの布陣はさらに強力なものとなる。
群雄割拠の争いが年間45万本といわれるリシャフト市場の拡大につながれば万万歳だが、少ないパイの取り合いに終わってしまえば業界の弱体化にもつながりかねない。
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