≪短期転売はハゲタカ外資の十八番≫との根強い固定観念を覆し、黒い目の国内勢が再生計画認可からわずか1年でコースを転売、逆に外資が買い手となる例が登場した。今回売却の対象になったのは、石川県の加賀セントラルGCと、岐阜県の多治見北GC。加賀セントラルは昨年8月、多治見北は今年3月に、それぞれ再生計画の認可決定を受けている。
売り手となっているのは、東京都内で不動産コンサルティング業などを営む(株)アクティオ21のグループ会社。
買い手は本誌読者にはお馴染みのPGGIHグループの資産保有会社PGP。当然のことながら運営はPGMだ。ちなみに2コースの値段は、加賀セントラルは再生法でカットした残りの債務付で3100万円、多治見北が17億8600万円。
加賀セントラルは、三重県四日市のプラスチック成型品メーカー・愛工社の創業者が作った3コースのうちの1つ。
四日市セントラルGCと芸濃セントラルGC、加賀セントラルGCの3コースの施設保有会社と運営会社などグループ6社が、預託金問題を原因に民事再生手続きの開始を申立てたのは昨年1月。
「最初は縁があってゴルフ練習場を経営することになり、昭和63年オープンの四日市セントラル、平成3年オープンの芸濃セントラルまでは何とか会員権募集までうまくいったが、バブル崩壊で加賀セントラルはうまくいかなかった上に、アメリカでのゴルフ場開発も手がけていたと聞いている」(地元関係者)という。
このためか、負債総額は860億円にも上り、申立当初こそ、民事再生申立の前から経営に関与していたとみられるアクティオ21をスポンサーとする自主再建を目指す、としていたものの、四日市セントラルと芸濃セントラルは東京建物グループのJ-ゴルフに売却することに。
しかし加賀セントラルだけは、アクティオ21をスポンサーとする計画案で可決。J-ゴルフはアクティオ21から運営を委託される形で、この1年、同コースに関与してきた。
また、多治見北はバブル期にノンバンクが開発を手がけようとして失敗、ノンバンクの債権者だった住友信託銀行がコースを完成させ、平成13年4月パブリックでオープン、運営は四日市セントラルグループに委託していた。
ところが、その四日市セントラルが民事再生手続きの開始を申し立ててしまったことから、多治見北も再生手続の開始申立をすることに。
パブリックで会員は居なかったためなのか、実に400億円もの巨額の負債を抱えながら、コースの外部売却はなし。
アクティオ21をスポンサーとする、カット率99・4パーセントの再生計画案がすんなり認可になり、こちらはJ-ゴルフに運営を委託することなく、計画認可からのこの半年は自社で運営してきたようだ。
気になるのは、今回の2コースの取得については、上場会社であるPGGIHは9月6日に東証にプレスリリースを出しているが、「肝心の加賀セントラルの会員が、売却の事実をきちんと知らされていない可能性が高い」(地元関係者)という点だ。
「加賀セントラルの民事再生計画案は、J-ゴルフが運営するからという説明で通しているし、その段階で1年後にPGGIHグループに転売するなんて話は全く出ていないはず」(同)というし、加賀セントラルの民事再生で監督委員を務めた奥田洋一弁護士も、「計画案に1年後の転売が盛り込まれていた事実はない」という。
9月14日付でPGGIHへの売却手続きが完了しているため、J-ゴルフは撤収しており、PGMから送りこまれた新支配人は「着任早々で、引き継ぎがきちんと済んでおらず、会員の方々にどのような説明をしているのか、まだ把握していない」という。
売り主のアクティオ21では「責任者が誰かわからない」としており要領を得ない。
過去、2大外資は「どうせ買うだけ買って、すぐに転売するに違いない」と言われ続けてきたが、実際には計画認可時点から後々の売却を予定し、債権者にも説明した上で転売したごく一部の例外を除くと、外資は転売というアクションを起こしていない。
それどころか一旦買ったコースは、徹底して収益改善に励んでいる、というのが実態だ。
簡単に転売し始めたのは黒い目の日本人だった、というわけだが、何と言ってもJ-ゴルフとPGMでは運営方針が全く異なる。会員への説明が尽くされることを願うばかりだ。
|