SLEルールの正式導入まで約1年、ほとんどのクラブメーカーが2007年モデルとしてルール適合ドライバーを準備している。しかし、複数のメーカーでは07年モデルで、新たな高反発ドライバーの発売を計画している。いま、あえて高反発にこだわるところは何か、この動きを追った。
先行したのはカタナゴルフだ。「今年初めに行った市場調査では、半数近くが高反発ドライバーを求めているという結果が得られました」(カタナゴルフ・近藤実氏)
これを受けて同社では、反発係数を過去最高の0.87以上まで高めたスウォードiZUマックスCORを2000本限定で11月1日に発売した。
同じアンケート調査では、ヘッド交換などの付加価値をつければ、さらに約2割のゴルファーが高反発を使いたいと回答しており、その対応として同社が用意したのは、08年3月末まで受け付けるルール適合ヘッドへの無償交換だ。
これならば、残り1年だけでもというゴルファーはもちろん、万が一競技に出ることになったり、プライベートでも肩身の狭い思いをしたりといった事態になったとしても買い換えなくても済む。もう一つの付加価値としてセットされている『飛び過ぎによる打球事故に備えてのゴルファー保険』は、いかにもの宣伝文句に聞こえるが、「従来の高反発よりも10ヤードくらいは飛ぶので可能性がないとはいえない」と近藤氏は真顔だ。
当初、一部販売店からは、「なぜいまさら高反発」という疑問の声も聞かれたが、蓋を開けてみればマックスCORの出足は好調だ。
「12万8000円(本体価格)という価格にも関わらず、入荷した10本はすでに完売」(松坂屋本店ゴルフ売場・竹下久氏)。
「店頭に並べているのは98パーセントがルール適合品。高反発を買いに来られた方はけっこうがっかりして帰られていました。そうしたお客様にタイムリーに出てきたのがマックスCOR。ヘッドを2個買ったと思えば安いものです」(竹下氏)
低調に終わった今年のゴルフ用品商戦で、販売店にとっても売れ筋の高額商品はありがたい存在だ。ヘッドとシャフトに24金のメッキ加工を施したマックスCORの24Kピュアゴールドタイプは、1本35万円(本体価格)という価格だが、1月の発売を前に多くの問い合わせが寄せられているという。
反響が大きいほど気にかかるのは、ヘッド交換希望が殺到した場合のメーカーの負担だが、カタナゴルフでは
「それほど多くはないと見ています。仮にヘッド交換が当社の予想を上回ったとしても、もともとこのモデル単独で利益を出そうという考えはなく、この後に予定しているルール適合ドライバーに流れがつながればいい」(前出・近藤氏)と強調している。
ところで、このヘッド交換、中古ショップで買ったものに関しては交換不可というので、これちらは要注意だ。
また、カタナと同じくやはり独自に行ったアンケート結果を踏まえ、高反発ドライバーを開発しているのはエナ。同社の竹内一取締役は、
「50歳代以上の3分の1は飛んだ方がいいと考えている。アベレージゴルファーにとってはパーオンが一つの目標であり、ナイスショットを2回続けてもパーオンできないクラブは使う意味がない」と言い切り、返す刀で、「ルール適合で高反発より飛ぶと謳うのは矛盾している。同じ構造で作れば高反発フェースの方が飛ぶに決まっている」とばっさり。
「適合クラブの開発も行いますが、ニーズがある以上は高反発も作り続けます」と07年以降の開発継続を明言している。さらに、カムイの中条佳一社長は、
「ゴルファーの楽しみを協会やメーカーが奪ってしまうのはどうか」と問題提起し続けており、同社のカムイプロも高反発ドライバーの開発を行うなど、ニッチな市場をねらった動きは中小メーカーを中心に活発だ。
一方、06年モデルで高反発とルール適合の二本立てで登場したゼクシオは、高反発が約4割とそれなりのニーズに応えたが、「最後の高反発と謳ったとおり、新たな高反発モデルはありえない」(SRIスポーツ経営企画部・山田照郷氏)とするなど、大手メーカー各社はルール適合へのシフトを明確にしている。さて新たな高反発ドライバーの行方、売れ行きに注目したい。
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