国内男子ツアーは、今週の日本シリーズで06年の全日程を終えるが、その前週、フルフィールドでの最終戦となるカシオワールドオープンでは、翌年の賞金シードを巡る熾烈な戦いが繰り広げられた。中でも注目を集めたのは、ここ2年間、選手会長としてツアー改革に取り組んできた横田真一のシード落ちの危機。ところが、そんな横田のピンチを救う隠し玉が用意されていたのだ。
今シーズンの賞金シード争いは、ダンロップフェニックス終了時点で、中嶋常幸、P・ハリントン、T・ウッズの3選手が出場義務試合数に達していないため、それを除外した73位が当落の攻防ラインとなった。
そのライン上のランク73位でカシオワールドを迎えることになった塚田好宣は、大会を前にして重大な事実に気がつく。
「ボクのブログに『73位じゃダメですよ』という書き込みがあったんです。そんなんです。今野(康晴)が日本シリーズに出られるから、73位はとりあえずQT(予選会)へ行かなくちゃならないんです。ボーダーライン前後は数万円ずつの僅差だったので、何位ならシードを確定できるのか、いろいろ計算していましたけど、そんな計算は無駄。上を目指してやるしかありません」
と語っていた塚田。予選を突破して自力で「72位以上」を目指したものの、結局、73位と順位は変わらず、大会終了と同時にQTのエントリーを済ませて会場を後にした。
今野は昨年の日本シリーズに勝ち3年の特別シードを獲得。ディフェンディングチャンピオンとして今年も同大会に出場できる。しかし今季は腰痛で思うようなスウィングができず、ダンロップフェニックス終了時点で賞金シード当確ラインに600万円ほど足りない89位。
それでもカシオと日本シリーズの成績次第で、73位以内に入る可能性を残していたのだ。塚田のシードは、日本シリーズで今野が3位以内に入れなかった段階で確定する。
注目の横田真一は、賞金ランク77位でシード確保には、他の選手の動向にもよるが、カシオワールドで15位以内に入る必要があった。
7アンダーの4位タイで決勝に進出した横田は、3ラウンド目に73を叩き13位タイに後退したものの、この時点での仮想賞金ランクでは4人を抜いてボーダーラインの73位。
そのままの位置を最終日まで維持すれば、95年以来11年間守ってきたシードを確保できたのだが、最終日に73とスコアを1つ落とし、31位で大会を終了したため、賞金ランクは1つ上がったに留まった。
QT行きが確定となった横田は「研修生のときの気持ちを思い出します。外車を売り払って一から出直します」と肩を落とした。ところが、その直後、思わぬ展開が待っていた。
最終日に会場に現れたJGTO会長の島田幸作が横田に「QTには出ないでくれ」と申し出たのだ。つまり会長推薦枠のような特別枠を用意し、試合出場の機会を与えるというのだ。
たまたま同大会に出場していた元選手会長の倉本昌弘は「そんなことを考えること自体がナンセンス。末期症状だ」と切り捨てた。
横田自身も「理事会が全員一致で決めたことですから、感謝してお受けしますが、正直に言って複雑な心境です。来年はもっとツアーに強力して一層頑張らなければなりません」と困惑を隠せない様子だ。
選手会長としてツアーに貢献してきた横田に対する配慮だが、選手の間にも賛否両論があり、この処置は今後も各方面に様々な議論を呼びそうだ。
(注)この後、横田真一は特例措置を辞退しQT出場を表明した。
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