今年の米LPGAツアーの頂点に立ったのは、メキシコ出身のロレーナ・オチョアだった。賞金女王の座ばかりでなく、プレーヤー・オブ・ザ・イヤー、ベアトロフィ(年間平均ストロークのトップ)も獲得しての3冠王。1年前には、誰も予想していなかっただけに、その反響は少なくない。賞金女王になると宣言しての女王獲得。オチョアに何が起きたのか?
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07年も女王の座に君臨するとロレーナ・オチョア
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最終戦のADT選手権の優勝賞金が100万ドル(2位が10万ドル)だったこともあり、賞金女王に関しては、最後の最後まで、行方が分からなかった。
もっとも、オチョアにすれば、最終戦を前に、プレーヤー・オブ・ザ・イヤーのタイトルを確定させ、カリー・ウェブやアニカ・ソレンスタムなどに、獲得賞金でも大きく水をあけていたことから、試合を前にして「プレーヤー・オブ・ザ・イヤーのタイトルを獲得するプレッシャーがなくなり、(最終戦には)より楽な気持ちで臨める」と自信のほどを見せていた。
そして、その最終戦で2位となって、賞金女王とベアトロフィをものにすると、「なんて言っていいのか分からない。
自分の目標はトップに立つことだったが、それが達成できてしまったんだから……」と声を詰まらせながらも、「このトップの座を何年も維持することは、非常に難しいことは分かっている。だから、やらなければならないことが沢山ある。
これからも毎年毎年、前の年より良いプレーが出来るようになる必要がある。これに満足せず、もっと高い目標を今は持っている」と、女王の座に君臨することを宣言したのだ。
アメリカ女子ゴルフ界で、昨年の今頃の話題といえば、ミッシェル・ウィや宮里藍、あるいは、ポーラ・クリーマーやモーガン・プレッセルといった10代、20代前半の若手が、A・ソレンスタムの長期独裁にどれだけ楔を打ち込めるか? といった話に終始していた。
そうした中で、話題に取り残されていたオチョアだが、当の本人は、シーズンの初めから「目標は、ナンバー1プレーヤーになること」と公言していたのだ。
メキシコのゴルフライターによると、「アメリカのマスコミには、ほとんど無視されたことで逆に発奮した」ということだが、それは、どこか日本の大山志保とも似ていなくもない。
不動の女王の座を脅かすプレーヤーとして、宮里藍や横峯さくらなど、若手ばかりが注目される中で、大山は、賞金女王の座を狙うことをシーズン初めから公言し、それを達成したからだ。
しかし、大山とオチョアの大きな違いは、オチョアが背中にメキシコという国を背負っている点だ。
オチョアは、先の11月15日に25歳の誕生日を迎えたが、彼女が2003年春に米ツアーに参戦した21歳の時には、メキシコでもほとんど無名に近かった。というより、ゴルフそのものが関心を持たれていなかったのだ。
ところが、オチョアが1昨年に米ツアーで、メキシコ人プロとして、初勝利を飾ることによって、事情は一変する(N・ロペス、L・トレビノはメキシコ系だが、それぞれ米国生まれ)
今では、彼女はメキシコのすべてのスポーツ雑誌の表紙を飾り、新聞でも大きく取り上げられると共に、アメリカのゴルフ中継がどんどん放映されるようになるという、大きな変化が起きていた。
日本ではジャンボ尾崎、韓国ではパク・セリが、ゴルフブームに火をつけたのと同じような状態が、オチョアの活躍によって、メキシコで起こっているのだ。
それにしても、オチョアの今季の成長ぶりには目を瞠るものがある。なにしろ、25戦して6勝、ベスト3入り14回、ベスト10入りなら20回という、常に優勝争いに加わっているような成績なのだ。
昨年のオチョアの平均ストローク数は71.39、今年は69.24と昨年より1ラウンド平均2ストロークも縮めているのだ。
「とにかく今年は、攻めていってバーディを重ねることを考えてプレーしていた。毎ラウンド70以下で回れるように集中していた」(オチョア)。その結果、「安定したプレーを続けられ、素晴らしいシーズンになった」という。
オチョアの影響で、近い将来、米ツアーに韓国、スウェーデンと並んで、メキシコ勢が、幅を利かせることになる可能性も十分にありそうだ。
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