カシオワールドで谷原秀人が予選落ちしたため、最終戦を待たずに3年連続、4度目の賞金王が確定した片山晋呉。「一昨年、昨年とは、また違った形で賞金王が取れ、確実に進化している」と片山自身が語っていたものだが、その進化のプロセスは他のプロからも高く評価されている。果たして「シンゴ1強時代」の到来なのか――。
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シンゴ1強時代の到来か
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今季の片山晋呉の獲得賞金額は、05年を4400万円余り上回る1億7840万円だった。2位との差も05年は約2000万円だったが、今季は差を約6000万円と広げ、数字的にも「シンゴ1強」を強く印象付ける結果となった。
さらにユニシスポイトランキングでも3年連続1位。同ランキングは主要9部門の順位をポイント化して決めるもので、総合力の指標となる。
その対象9部門中、05年は1位となったのは平均ストロークの1部門のみだったのが、06年は試合途中の棄権があったため規定により平均ストローク賞は2位のJ・M・シンに譲ったものの実質1位をキープしたばかりか、パーキープ率、サンドセーブ率と合計3部門で1位となり、「進化」を裏付ける形となった。
オフに片山と一緒に合宿をしてつぶさにその取り組みを見ている広田悟は、
「高レベルの練習をやり続けられるところが凄い。僕なんかは100球打って『出来た』と思うと次のことをやりたくなってしまうけど、晋呉さんは、それを1年やり続けるんです。体が何も考えなくても、そう動けるようになるまで。
頭と体のギャップを埋める作業を、オフばかりじゃなく、シーズン中も続けている。僕はそこまで気持ちが続かないというか、妥協、甘えがある。晋呉さんは自分に厳しい」
と片山の取り組みを絶賛する。
片山の次世代に位置する星野英正は「ゴルフのことを深いところでトコトンわかっている人」と言い、上の世代の藤田寛之は「ゴルフを追求するプロ意識が非常に強い」と言う。
さらに藤田は「晋呉は、他の選手には発見できない何かが見えているような気がします。晋呉からすれば、『まわりの選手も、もっとこうすればいいのに』という思いもあるんじゃないでしょうか。実際、晋呉に技術的な質問をすると惜しげもなく教えてくれますからね」と言う。
片山自身は自分の取り組みをこう語る。
「練習はゴルフを上手くするけど、強くはしてくれない。優勝争いの中でしか、道具でも技術でも試せないことがある。だから、勝つ、勝たないは相手のあることだから、どっちでもいいけれど、常に優勝争いの中にいなければならない。球を何百球も打つよりも、いつも優勝争いを続ける必要があるんです。その中で見えてくるものがある。いろんな選手と話をしても、こういう考え方をする人が少ないのはさみしい」
快調にトップを独走する片山のようだが、「トップとしてやらなくちゃいけないこととか、もっと大人にならなくちゃとか、考えているうちにどんどん暗くなって……」とシーズン中盤を過ぎたフジサンケイで漏らしていたように、技術やメンタル以外での苦悩もあったようだ。
片山が指摘するように片山以上に進化する選手が出ない限り、まだまだ「シンゴ1強時代」は続きそうだ。
ファン離れ、スポンサー離れの現実を前にして、このまま片山の独走が続ことは片山にとっても他の選手にとっても、悦ばしいことではないはずなのだが……。
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