昨年12月15日、河口湖CCの経営会社が民事再生手続きの申立を行った。著名人や有名企業が会員として名を連ね、山梨県のプライスリーダーたる名門コースとして知られるこのコースの突然の破綻。一体何があったのか。
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今や名門でも簡単に破綻する時代(河口湖CC)
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河口湖CCは富士山の麓、標高1000メートルに位置する本格的なリゾートコースとして、昭和52年に18Hでオープン、2年後の昭和54年に27Hに増設した。
百貨店の松屋系列のコースとして知られ、経営会社の歴代社長には、数年前までは代々松屋本体の社長が就任。長年コース経営会社の会長を務めた古屋勝彦氏は、松屋の創業一族にして、平成元年12月から16年以上に渡って松屋の社長を務め、昨年3月からは会長職にある人物。
歴代の理事長にも、松屋の大株主に名を連ねる大成建設の中興の祖・菅沢英夫氏や、元三菱銀行常務で松屋の会長も務めた石坂泰彦氏ら、松屋ゆかりの大物財界人が就任。前理事長の柴田隆三氏も、東京建物の社長・会長を歴任し現在は東京建物最高顧問の肩書きを持つ。
コース経営会社の東京事務所も、長らく松屋銀座本店に近い、松屋の事務所に間借りしていたこともあり、業界内では当然松屋の直系コースだと思われてきた。このため、会員の一部から松屋の道義的責任を問う声がないではない。
だが、実は松屋の持株比率はわずか13パーセント。もともとは松屋が40パーセント、残る60パーセントを、おもちゃ屋の博品館などが保有していたが、平成11年頃に本業とは無関係との判断から、27パーセントを博品館などの他の株主に売却している。
コース経営会社の負債総額は102億7700万円、債権者総数は約2200名だが、このうち2187名の会員から預かった預託金債務が91億7600万円を占め、残りはほぼ松屋やその関連会社からの借入金。
自己資本わずか152億円の松屋が、道義的責任だけで90億円以上の預託金債務を背負い込むことは、今のご時世では松屋の株主が許さない。
今回の突然の民事再生手続き申立の理由について、コース側が上げているのが償還請求問題。償還期限が到来した平成13年6月に、同CCは理事会決議で「償還請求受領後2年間据え置き、その後5年間均等分割(6回)償還」という珍しい償還方法を採用。
現在預託金の償還請求者数は95名、償還請求を受けている預託金債務は3億7000万円になるという。
ところがコースの売上高は今や6億円台。9000万円~1億円程度の営業赤字が続いており、近い将来返しきれなくなるのは明らかだ。たった3億円くらい松屋に出してもらえ、との声も会員の一部からは出ているようだが、松屋は既に10億円の貸付金を出している。このままずるずるというわけにはいかないだろう。
ところで今回は申立段階で既にスポンサー候補が概ね決まっているプレパッケージ型。スポンサー候補は東京建物で、一部の地権者の希望で、松屋もわずかながら資金を出してスポンサーの一角に加わる。
預託金以外の債務がほとんどなく、会員にその気があれば自主再建も可能なところへスポンサー付きとなるだけに、退会・継続にかかわらず弁済率は何と4割という破格の高さだ。
もっとも、「ウチのコースの会員のほとんどは利殖で会員権を持っているわけじゃない。従来はメンバー優先の運営で、プレーしやすい環境を作ってくれていた。東京建物がこの環境をちゃんと引き継いでくれるかどうかが最大の関心事」(オープン当時からの会員)
ダイワ精工、河合楽器、クボタなど、親会社にネームバリューはあっても体力が及ばず、ゴルフ場子会社が法的手続きに至ったケースはもはや珍しくなくなった。
日経新聞の系列だと思っていたら、実は預託金を預かっていたのは日経とは縁もゆかりもない地主の資産管理会社だった、という木更津ゴルフクラブの例もある。
会員は親会社だと思っている大企業が、厳密には親会社ではなかったり、いつの間にか株を手放し、知らぬは会員ばかりなり、というケースもある。もはや大企業の系列だから経営破綻はない、という法則は成り立たないのだ。
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