2年前に施行された個人情報保護法により、ゴルフ場でも会員名簿の発行を一時停止するなど、対応に苦慮するところがあった。なかにはハンディキャップボードの掲示を止めるという、やや過剰な反応もあったが、それも今はすっかり落ち着いた感がある。それでも同保護法により、ゴルフ場では個人情報に関する管理の意識と体制は大いにレベルアップされたようだ。
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かかった費用は120万円(作州武蔵CC)
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東京・八王子CCの大石順一総支配人は
「毎年の会員名簿発行の際、以前は変更点があればお知らせくださいという案内だけだったのが、法律施行以降は基本的に記載していた自宅と勤務先の住所・電話番号について、その承諾を得るようになりました。直後は約3分の1の方が、自宅か勤務先のどちらかの削除を申し出られました」
と対応の一端を話してくれた。
その他は、利用約款に同保護法に則った管理の実施を謳うといった程度の対応で、大きな戸惑いも、その後のトラブルもないという。
ただし、「この法律でそれまで余り意識しなかった、お客様の個人情報の取り扱いは、より慎重になりましたから、いいきっかけだったのかも」と振り返る。
実際、以前はゴルフ場に所属会員の連絡先を問い合わせると、案外簡単に教えてくれることが多かったが、今はどこも「本人のご了解を得てから、ご連絡いたします」と返される。その分、ゴルフ場の手間は増えたのだろうが、会員や利用客の安心感が増したことは間違いない。
この個人情報の適切な管理に≪お墨付き≫をもらったゴルフ場がある。岡山県の作州武蔵CCでは、昨年末、(財)日本情報処理開発協会からゴルフ場業界としては初めて「プライバシーマーク」の使用許可の認定を受けた。
この制度は、同協会により事業者が個人情報の取り扱いを適切に行う体制等をきちんと整備していることを認定し、その証明としてマークの使用を認めるもので、国内では既に6700社ほどが認可を受けている。
ただし、サービス業の娯楽業カテゴリーのスポーツ施設提供業では、まだ同CC(ホテルを併設)のみ、とのことだ。
経営母体のハリマ化成(株)の広報室長・久保田裕造氏によれば、「申請中のゴルフ場もあると思いますが、多くの事業者が申し込んでいるので、認定には少し時間がかかりますから、急には増えないでしょう」と語る。
また、事業規模によって申請費用は異なるが、同CCが属する大規模事業者の場合、申請料5万円、審査量95万円、マーク使用料20万円、計120万円を要することもネックになっているのだろう。
それはともかく、同CCが取得の検討を始めたのは2年前10月。それから、専門のコンサルティング会社と共に社内の体制作りを1年余りもかけて行った後、同協会に申請。現場審査を受けたあと、さらに半年余、書面での改善報告を3度ほど繰り返し、ようやく認定された。
「一番のハードルは、私も含め、従業員の間に情報管理に対する危機意識、ことの重大さの認識がほとんどなかったことです」(同CC管理部・井伊賢治氏)
そのため内部では、管理違反に対する罰則規定や誓約書まで作成したという。「これが営業につながるわけではありませんが、お客様に情報管理での安心感を持っていただければ……」と井伊氏は意義を語ったうえで、やはり従業員の意識向上が大きな収穫になったと評する。
国際的な標準規格のISOのうち、環境マネジメントのISO14000シリーズを取得するゴルフ場が多数あるように、案外見えないところで経営努力しているのが今どきのゴルフ場なのかも。
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