今年のマスターズは、昨年とは一味違うものになりそうだ。オーガスタナショナルGCのフーティ・ジョンソン前会長は、コース改造などハード面の改革を進めたが、昨年5月に就任したビリー・ペイン新会長は、ソフト面に力を入れていく模様だ。ペイン会長は、アトランタオリンピックを成功させた人物だけに、マスターズをこれまで以上に世界的なスポーツイベントとして、充実させていくことに意欲を燃やしているのだ。
具体的には、今年のマスターズで、テレビ中継が始まる前の1時間、インターネットのオフィシャルサイトで映像中継を行う計画を打ち出した。
「マスターズ・エクストラ」と名付けられたこの中継が始まることによって、これまでテレビではほとんど見ることができなかった出だしのホールの映像も見ることが可能になり、試合展開の全容が分かることになる。
「より長い中継は、インターネットの重要性を認識したもので、ゴルフという偉大なスポーツを可能な限り多くの人々に広めていこうという、私たちの基本的な考え方に沿うものだ。世界のより多くの人々にマスターズの面白さを知ってもらうために、私たちは、常によりより新しい方法を模索しているが、これによって、試合へのアクセスもきっと大きく増えるはずだ」(ペイン会長)
昨年は、「アーメンコーナー・ライヴ」と称して、11番、12番、13番ホールのライブ中継を行って370万人のインターネットのアクセスを記録したが、今年はこれに加えての映像中継で、オフィシャルウェブサイト(www.masters.org)の知名度をさらに高めていく方針だ。
インターネットでの中継は、日本時間で、最初の2日間は、朝の4時から5時、3日目が3時半から4時半、最終日が2時半から3時半となっている。
もともとマスターズといえば、テレビ中継はバック9の9ホールがメインで、アウトの9ホールは「会場に足を運んでくれるパトロン(ギャラリー)の権利」とも言われていたのだが、ジョンソン前会長の時代に、テレビ中継が第3ラウンドまで1時間、最終日に関しては1時間半ほど伸びて、フロント9の中継も行われるようになっていた。
方針が大きく変わったのは、女性メンバーの入会問題で、スポンサーをつけずにテレビ中継を行った04年からで、同時期にインターネットに力を注ぎ始めたのだ。オフィシャルサイトに日本語の記事が掲載されるようになったのも4年ほど前のこの時期からだった。
マスターズの改革はこれだけにとどまらない。新会長は来年からマスターズの招待基準に米PGAツアーの優勝者のカテゴリーを再度加える心づもりであることが伝えられている。
かつては大会の前週までの1年間の米ツアー優勝者は、自動的に招待を受けたが、ワールドランキングが導入されて以来、この基準がなくなっていた。
その一方、「現時点での最高のプレーヤーを集めたフィールドにする」という目的のために、アーノルド・パーマーなど、過去の優勝者などで、トップレベルのプレーが出来なくなったプレーヤーに対して、引退を勧めていた。
このため昨年は、参加プレーヤー数が92名と、通常の試合の3分の2以下になってしまっていたのだ。
ただ、米ツアーの優勝者を招待するといっても、メジャーやWGCの裏試合やフェデックスカップの後に開催される6試合の優勝者も加えるのか、といった問題もあり、「改革を急いで進めることはこれまでもなかったし、これからもない」(ペイン会長)ということで、今年の招待基準の変更は諦めたようなのだ。
いずれにしても、徐々にではあるが、新会長の下、マスターズの改革が進んでいく気配だ。日本のゴルフファンにとっては、眠れぬ時間が増えたり、フィールドが大きくなれば、特別招待枠が減らされたりする可能性もあるわけで、一概に喜んでばかりはいられないのだが……。
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