アベレージゴルファー向けのいわゆるディスタンス系ボールの国内市場は、ブリヂストンスポーツの「ニューイング」とSRIスポーツの「エブリオ」が2大ブランドで、互いに2年に一度の割合でリニューアルを繰り返しながら、シェアの拡大を図ってきた。今月、その両ブランドにそれぞれ新たな動きがあった。
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1ダースで3000円以上値下げされた
ミラクルエブリオ
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まず、ブリヂストンは3月8日に、2年ぶりのリニューアルとなる「スーパーニューイングLS330」(1個735円、税込み)を発売した。
「3層構造の中間層となるインナー素材に、高反発で、かつスピン量を減らす働きをする新素材を採用。この素材は10年に1度の画期的な開発だと自負しております」(広報室長・嶋崎平人氏)ということで、これまで以上の飛びを求めながら、打感は柔らかいとアピールする。
同社のディスタンス系といえば、昨年、上級者向けの「ツアーステージ」ブランドからV10が新発売。これが、テレビCMで宮里藍に「もっと飛ばしたい?」と優しく誘われた(?)お陰もあってか、初年度80万ダースという大ヒット商品となった。
ところが、今回の新スーパーニューイングは、それを上回る初年度100万ダースが売り上げ目標という。この2つのボールでディスタンス系ユーザーを総取りしようというのだろうか。
それに対し、ライバルの「ミラクルエブリオ」がとった手は、同じく735円だった価格をオープンプライスにすることだった。これは、昨年リニューアルされたばかりの商品を、実質値下げするということ。
現在店頭には、先月まで税込み1ダース=8820円だったのが、3000円以上も安い5000円余りで並べられている。「シーズンが近いということもあり、小売店さんでは、さっそくいい反響を得ているようです」(広報・山田照郷氏)
しかし、大手メーカーのボールは、後継の新製品が発売されたあとに値下げされるのが一般的。それが今回のように、リニューアル後1年で、しかも主力商品が実質大幅値下げされたことに、業界関係者の間には様々な憶測が生まれている。
「同社の旗鑑商品のひとつですから、単なる値下げというのではなく、裏には何らかの戦略があるのでしょう。例えば、すぐ後継のボールが発売されるとか。ディスタンス系の主力商品はゼクシオ1本に絞るとか」(海外メーカーの日本法人関係者)
「発売1年で値下げというのは初めて聞く話なので、何らかの意図か、特別な事情があると思うのですが……」(国内メーカーの営業担当者)
また、5000円という価格になったことに関しても「4000円台ならともかく、1ダースで5000円払うゴルファーは指名買いの客なので、新たな客層はつかみづらいのでは」とシビアな見方をする関係者もいる。
そうした周りで飛び交う憶測をSRIスポーツにぶつけてみたのだが、「もともと売れている(某用品専門業界誌調べでは、ボール売り上げの第4位で、同社製品の一番手)、好評なボールをより多くのゴルファーに使ってもらうための価格戦略です」(山田氏)という答え。
先週末には、同じくディスタンス系で人気が定着しつつあるキャロウェイゴルフのERCボールからも、新たに「ハイパーERC」という新製品が発売された。同社によれば、「スーパーニューイングのライバルになれる製品だと思っています」(広報担当者)と強気の姿勢だ。
ディスタンス系ボールはますます覇権争いが激化することは必定。この戦いの中でいち早くプレイス面で先手を打ってきたということか。これまでのリニューアルサイクルからすれば≪賞味期限≫をたっぷり残してのミラクルエブリオの実質値下げ、今後の動きが注目される。
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