昨今の男子ツアーの低迷は、かつて自他ともにジャンボ尾崎の後継者と認められてきたこの男の不振とまったく関係がないとは言い切れない。昨年は優勝もなく、ついに賞金シード圏外に転落した伊澤利光が、今年≪意外な契約≫を得て、心機一転、新しいシーズンに臨む。
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新契約を得て復活なるか、伊澤
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不惑を前に復活を期す伊澤利光だが、昨シーズン途中で長年連れ添ったブリヂストンスポーツとの契約を解消し、今年はクラブ契約なしで開幕を迎えることになりそうだ。
しかし、開幕を目前にしたこの時期、2つの企業が伊澤と新たにスポンサー契約を結んだ。そのうちの1社は、宣伝・販促契約を結んだ中古ゴルフクラブ大手の「ゴルフ・ドゥ」だ。
中古クラブ店というと、同社がこれまで起用していた村野武範やライバル社の武田鉄也など著名タレントをイメージキャラクターとして起用してきた。しかし、ここにきての方向転換にはこんな理由がある。
「設立6年目で上場も果たして、ある程度ブランドイメージを確立できました。今後はサービスやリペアなど付加価値を高めていきたいと考えています。クラブに対するこだわりの強い伊澤プロのイメージと合致させたい」(ゴルフ・ドゥ経営企画室・若井秀樹氏)
一方、メインスポンサーの全日空をはじめ、これまでナショナルブランドに彩られてきた伊澤サイドに、トッププロとして初めて中古クラブ店のイメージキャラクターを務めることへの抵抗はなかったのだろうか。所属事務所は明快に否定する。
「ゴルフだけの物差しで考えればそういう見方があるかもしれませんが、松井秀喜選手や藤原紀香さんが中古車専門店のコマーシャルに出演するなど、中古業界でもイメージ戦略を大切にしています。今回はその中で伊澤プロのキャラクターを買っていただいたと考えています」(ジョイックス・マーケティング担当・松室淳彦氏)
ちなみに「ジョイックス」は、昨年2月に伊澤と帯同キャディの前村直昭氏が中心となって設立したマネジメント会社で、伊澤のほか現在、米山みどりや広田悟など18名のプロがマネジメント契約を結んでいる。
同社は、伊澤自身の経験を踏まえ、「アスリートが安心して競技に集中し、力をフルに発揮できる環境を整える」(伊澤)ことを設立理念としており、その一環としてスポンサー獲得にも積極的に動いている。今回の契約に関しても、
「ゴルファーなら誰でも知っているプロを探していたところに、ちょうどお話をいただいた」((株)ドーム)だ。2005年の「アンダーアーマーKBCオーガスタ」で優勝するなど縁のある会社だが契約に至った背景には復活に賭ける伊澤自身の強い思いがある。
同社の契約選手に対するサポートは、単にウェアや金銭の提供にとどまらず、選手のパフォーマンスアップのために個別のトレーニングおよびサプリメントプログラムの開発、アドバイス等を行うところに特色がある。
同社では、松坂大輔はじめ様々なトップアスリートをサポートしているが、ゴルフでは
「矢野東プロ、増田伸洋プロは、弊社サポートによる肉体改造を経て、いずれも契約初年度にツアー初勝利を挙げた」(ドーム・ブランドマーケティング部・加藤岳氏)実績がある。
伊澤も1月には同社のジムでトレーニングをこなし、福岡に戻ってからもメニューにもとづいて例年以上にウェートトレーニングを積んでいる。
「40歳近くになって身体のバランスを保つことの必要性を本人も自覚してきた。このオフの間にひと回り体が大きくなりました」(ジョイックス・松室氏)
ここ数年ファンを失望させた感のある伊澤だが、完全復活を期す30代最後のシーズンがまもなく始まる。
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