近頃の女子ツアーでは、アイポッドなどのイヤホンを耳に当て音楽を聴きながらて練習している選手の姿をよく見かけるようになった。音楽によって脳から出るα波には、集中力を高めたり、気持ちをリラックスさせたりする効果があるといわれている。音楽を聴くだけでスコアアップできるのなら、ゴルフの行き帰りや、スタート前のちょっとした空き時間など、これを利用しない手はない。
CD店をのぞくと、軽いクラシックや波や風などの自然の音を集めたCDが「α波ミュージック」として並べられている。しかし、これらのCDの中にα波が録音されているわけではない。ゆったりした音楽やサウンドを聴くなどして、緊張状態が解かれたときに人間の脳から出るのがα波だ。
α波は、周波数によって、その働きがさらに細かく分類されている。最も周波数の低いα1は癒しの効果、α2は直感力やひらめきを増す効果、そしてもっとも高いα3には集中力を高める効果があることが分かっている。
これらのα波を目的に応じてもっと効率よく引き出すことができれば、医療やスポーツなどさまざまな分野で役に立つのではないかと、研究を進めてきたのが名古屋工業大学の伊藤英則教授だ。
音楽や自然の音にはそれぞれのリズムや周波数があり、それが自分の波長とうまく合えばα波を引き出すことができるが、人によっては合わない場合もある。
そこで伊藤教授は、個人個人の波長に合ったサウンドを作れば、αを引き出しやすくなるのではないかと考え、その人の脈拍波形を元に世界でたったひとつのオリジナルサウンドを自動作成するシステムを考案した。
すでに神経症や不眠症治療などの医療現場では、このシステムで作ったサウンドの治療効果が出ているが、リラックスや集中力が必要なスポーツということで今度はゴルフの世界で実用化が進められている。
4月中旬に行われた後援競技岐阜オープンの会場では出場選手を対象に、伊藤教授の研究に基づいて開発された「ハートショット」CDを作成するデモンストレーションが行われた。
脈拍の測定からCDができあがるまで約5分で済む手軽さもあって、選手の関心は高く、「ほとんどの選手にオリジナルサウンドCDを作っていただきました」(日本メディアセントラル・ハートショット事業部・小澤亘氏)
評価は選手によってまちまちだが、なかには早速試合で効果が現れたという選手もいた。
「練習ラウンドのときに作ってもらって、行き帰りの車の中でずっと聴いていました。最終日のスタートでいきなりOBを打ってしまい、いつもだったら崩れてしまうのに、そこからすぐに気持ちを切り替えて立て直せたのはCDのお陰かも」(アマチュアながら12位タイに入った赤阪壽彦選手)
また普段からクラシック音楽を聴いてリラックスを心がけているというすし石垣は、「2、3日ではよくわかりませんが、それなりの効果はあるんじゃないですか。もう少し聴き続けてみます」とこのCDを持って翌週のツアー開幕戦・東建ホームメイトカップに乗り込んでいった。
このほか、谷口徹や星野英正、井戸木鴻樹、桑原克典などもCDを作成しており、α波の効果のほどは、この号が出る頃には判明しているだろう。
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