PGGIHが、国内コースの獲得競争に明け暮れた第一ステージから、次なるステージへの展開に乗り出した。その端緒となっているのが、3月下旬に公表された、加賀セントラルGCの転売である。2大外資の1つ、PGグループの目指す方向は何か?
加賀セントラルは四日市のプラスチック成型品メーカー・愛工社の創業者が作った3コースのうちの一つ。
四日市セントラルグループが運営受託を受けていた多治見北GCともども、民事再生手続きを経て、東京のコンサルティング会社・アクティオ21がスポンサーに就任、東京建物グループのJ-ゴルフが運営を受託していた。
が、アクティオ21は、加賀セントラルのスポンサー就任から1年あまりが経過した昨年9月、両コースをPGGIHに転売。それからわずか7カ月で、今度はPGGIHが加賀セントラルの転売を発表した。転売先は韓国出身で米国籍の実業家・チョン・クリストファー・ヤング氏。
遂に外資の本性を現し、短期転売に出たのかと思いきや、「売却しても運営は引き続きPGMが請け負う≪セールス・アンド・リースバックを使った新しいビジネスモデル≫で、加賀セントラル以外は、過去に買収したコースを売却して運営を受託するということはない。傘下200コースを目指す中で、今後この形で何コース、というわけでもない」というのがPGGIH側の説明。
だが、運営受託はあくまで所有者がPGMと委託契約を締結してくれればこそ成り立つ。現に、アクティオ21から所有者が代わったことで、J-ゴルフは1年で撤退に至った。所有権を持たずして、長期にわたってPGMが運営を行える保証はない、とも言えなくはない。
この疑問については「ヤング氏は米国在住でもあり、そもそも自ら運営をしようという意志は全くない。強固な信頼関係もあり、契約期間は5年間だが、双方に何も異存がなければ原則自動更新される」(PGGIH広報)という。
それでも残る疑問は、なぜ加賀セントラルだけなのか、という点だ。実はここに今後のPGGIHの戦略が潜んでいる。
「来日していたヤング氏が、縁あって実際に加賀セントラルでプレーをした結果、どうしてもこのコースがほしいという申し出があった」(同広報)ため、ヤング氏に売却したわけだが、当然欲しいと言われたら売る、というわけではない。
つまり、他ならぬヤング氏のたっての願いだから聞き入れた、ということのようなのだ。
「PGGIHの社名には≪パシフィック≫という単語が入っています。日本のみならず、いずれはアジア、環太平洋にテリトリーを拡大したい」(同広報)という目標が込められているわけだが、広く海外でゴルフ場ビジネスを展開していく上で、何よりも重要なのは人脈だ。
ヤング氏はIBM、ルーセントテクノロジーアジアパシフィックなど経て起業、韓国市場の上場会社のオーナーでもある。
また、ヤング氏の義弟は、米国で最も成功したお金持ちUSAベスト400人に入っているほか、2005年米国商工会議所が選んだ、最も影響力があるアジア人の1人で、NBAのワシントンウィザーズのオーナーの1人でもある。
ヤング氏は、今後の戦略上、極めて重要な人物ということらしい。先般、アコーディアもゴルフ練習場との提携に乗り出した。2大外資の新戦略の今後に注目だ。
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