今年の流行色は黄色、といってもファッションではない。一昨年の「青マナ」、昨年の「ツアーADの青(PT)」に代わって、今年もっとも売れているのが鮮やかなイエローのランバックスだ。このカーボンシャフトの市場にいまちょっとした≪問題≫が起きている。
2年連続でライバルの三菱レイヨンとグラファイトデザインに明け渡していた首位の座を今年はフジクラが取り戻しそうだ。
今年は、シャフトメーカー御三家の三菱レイヨンが『ディアマナD』、グラファイトデザインが『ツアーADクワトロテック』、そしてフジクラが『ランバックスXシリーズ』を発売し、それぞれのカラーリングの特徴から「白」「緑」「黄色」の戦いとして注目されていた。
そして、その中から抜け出しそうな勢いを見せているのが『ランバックスX』だ。
フジクラでは当初、初年度の販売目標を10万本と設定していたが、販売実績は立ち上がりから予想をはるかに上回るペースで推移し、4月末までに年間目標をクリア、最終的には目標の2倍の20万本に達するとみられている。
数字を押し上げているのは、リシャフト市場はもちろん、ホンマなどシャフトを自社生産している以外のほとんどのクラブメーカーにカスタムシャフトとして採用されていることも大きい。
カスタムシャフトでは、これまでグラファイトデザインとの結びつきが強かったブリヂストンも、6月に投入する『ツアーステージGR』には、ストック品(在庫商品)として同社純正シャフトのほかは『ランバックスX』のみをラインナップする。「『Xドライブ』でも販売比率が高い」(ブリヂストンスポーツ広報室長/嶋崎平人氏)
これはタイトリストでも同じ動き。
「プロによるブラインドテストの結果、『ランバックスX』と『ディアマナS』の2種類があればほとんどの上級者にフィットすることがわかりました」(アクシネットジャパン商品企画/黒野隼氏)
中でも『タイトリスト907D1』と『D2』では、約7割のユーザーが『ランバックスX』を選択しているそうだ。
多くのプロから「フジクラらしくないシャフト」と評されている商品が、大ヒットした理由としては、飛び最優先路線からの脱却が挙げられる。
「『スピーダー』は飛びを追求しすぎたため、合う人にとっては最高でも、反面合わない人もいました。そのため売れた後の反動も大きく、ここ2年他社に先を越されてしまいました。その反省に立って『ランバックスX』は性能本意からお客様本意に発想を転換しました」(藤倉ゴム工業スポーツ事業部長/高梨修一氏)
その結果、完成したのが、「自分でコントロールできるやさしさがあり、思い切り振れるシャフト」(フジクラゴルフクラブ相談室木場店/佐藤雅士氏)という。
4月末時点でモノによって3週間近いバックオーダーを抱える『ランバックスX』だが懸念材料もある。
それはライバルではなく、中国の好景気だ。中国の航空会社が世界的にカーボンを多用するボーイング787型機を大量発注したことで、カーボンの品薄傾向に拍車がかかったため、増産したくてもできない状況なのだ。
「いまは指名買いがほとんどですが、試打クラブもない状態が続けば今後の販売では不利になる」(京葉ゴルフ)
品薄と聞けばよけい手に入れたくなる消費者心理も手伝って、今後のシャフト市場がどう変化するかは見極めがつかない状況だ。
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