日本ゴルフ協会(JGA)は、3月に発足したアンチドーピング委員会(水野正人委員長)がその啓発活動に乗り出した。第一歩として6月開催の日本女子アマ、7月の日本アマの主催競技2試合でドーピング検査を実施する。
昨年12月、政府がユネスコの『スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約』を締結。これに伴い(財)日本アンチドーピング機構(JADA)から、各団体に、アンチドーピングが促されている。
今回の検査実施は、これに呼応するものだが、実はゴルフ界でも、他のスポーツ同様、アマがプロに先行する形ですでに検査は実施されている。
ドーピングは、基本的に≪1≫選手自身の健康への害≪2≫アンフェア≪3≫社会悪≪4≫スポーツ固有の価値を損ねるという4つの理由から、これを撲滅するのがアンチドーピングだ。
昨年行われた世界アマでは、すでに検査が行われており、宮里藍もアマ時代、アジア大会で金メダルを取った時(02年)に検査を受けた経験を持つ。
また、ナショナルチームのメンバーは、いつでもドーピング検査の対象となりうる≪競技外ドーピング≫に備えて、JADAに居所情報を通知するという義務をも持っているという。
そのため、ナショナルチームの面々は、すでに知識も経験もある。だが、それ以外の選手にとっては、初めての検査となるだけにJGAも万全の体制でこれに臨もうとしている。
ここで考えておきたいことは「一体何が禁止薬物となるのか」ということだ。故意にドーピングを行う場合はもちろん問題外だが、それ以外は、知らずにひっかっかってしまうケースが圧倒的に多い。
使用可能薬物、禁止薬物については、日本体育協会のHPからもチェックできるが、対象となる試合の出場が決まった選手には、冊子を配布するなどして周知徹底に務めている。 「すでにずいぶん問い合わせメールが来ています」(JGA事務局・林忠男氏)と、サプリメントや栄養ドリンクなども含めて、不安な選手が多いようだ。
Jリーグ川崎Fの我那覇和樹選手が受けた栄養剤の注射が、違反行為に当たる静脈注射とみなされ、6試合の出場停止処分を受けたことは記憶に新しい。
栄養剤の注射などは、比較的ポピュラーになっているが「注射自体は問題ないのですが、静脈注射は治療行為以外は禁止です」(前出・林氏)ということをよく知っておかねばならない。
もう少し詳しく、JGAアンチドーピング委員で早大スポーツ科学部スポーツ医科学科の福林徹教授に説明してもらおう。
「治療行為かそうでないかの判断基準は、日常生活ができる範囲より(疾病が)ひどければ治療行為ということ。ただ、治療行為として打った注射が、結果的に競技力も向上させてしまう場合がある。結局は医師の判断だが、白と黒の間にグレーゾーンがあるのも事実。試合前や試合中に投薬を受ける場合は、医師に選手であることを告げるように指導しています」(福林教授)
当面、JGAは今年2試合のみで検査を実施。だが、やがては日本オープン、女子オープンでも行う意向がある。
ただ、プロの世界では、アンチドーピングはあまり広がっていない。「欧州でツアーとしてではなく、一部の試合で検査をした、という話を聞いたことがあります。ツアーとしては、数年前に議題にのぼりましたが、当面は検査をしないということになっている」(日本ゴルフツアー機構=JGTO広報、田中謙二ディレクター)とのことだ。
「摘発が目的ではなく、アンチドーピングの精神の啓発が目的」(福林教授)というJGAの動きが、やがてはプロの世界にも広がることを祈りたい。
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