5月11日早朝、愛知県豊川市の平尾CCで宿直の警備員が殺害されているのが見つかった事件には、不可解な点が多い。クラブハウス内にある据付金庫にこじ開けようとした傷があることから、強盗目的と思われる。一方で、物色した跡がほとんどないことなどから内部事情に詳しい者の犯行とも。しかし、内部事情に詳しい者なら、ゴルフ場の金庫には大した現金は保管されていないことも知っているはず。
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事件後、機械警備に変わった平尾CC
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今回の事件、犯人はまずコース出入り口脇にあるミーティング室の窓ガラスを割り、そのカギを開けて侵入したと思われる。
その後、宿直室で就寝中だった同CC社員の警備員(60歳)を殺害、同警備員が所持していた書庫の鍵を奪って、書庫内にある据付金庫をこじ開けようとしたようだ。
しかし、開けることができなかった犯人は、事務室に保管されている車(ハウス脇に駐車されていた)のカギを持ち出して、同車で逃走。ゴルフ場の近くに止めてあった車に乗り換えると、ゴルフ場の車に火をつけ、逃走したと見られている。
犯人が内部事情に詳しい者と思われるのは、警備員の宿直室が細い通路の奥にあり、一般には知られていない場所にあること。同様に、金庫の場所やその部屋のカギの保管場所を知っていたと思われることなどからだ。
しかも、同CCでは釣銭用に用意する60~70万円の現金は、平日、従来は金融機関の担当者が持参していた。
しかし、1カ月ほど前からゴルフ場側が売り上げから用意して、金庫に保管することになった。さらに、事件のあった当日は、これにコンペ客からの預かり金も加わって、「金庫にはたまたま140万円ほどの現金が保管されていました」(川本健支配人)という。
ますます内部事情に詳しい者という見方が強まる。しかし、それならせいぜい140万円程度しか保管されていないことを承知でこれほど荒っぽい手を使ったのかという疑問も残る。
「ゴルフ場では、これまではコース売店とか、外に置かれた自動販売機が荒らされるといった、いたずら程度の事件しかありませんでした。また、最近はカード支払いが多くなり、保管する現金の額も知れていますから、こういった強盗に襲われるとは思ってもいませんでした」(川本支配人)
周辺の2~3コースに話を聞いたところ、うち1コースは同CCと同様、常時、釣り銭用に50~60万円の現金を保管しているとのことだった。まさかこの程度の現金を奪うために、警備員がいる、もしくはセンサーによる機械警備がセットされているゴルフ場を殺人まで犯して襲う者が現れるのだろうか。
ところで、ゴルフ場の夜間警備だが、警備会社大手のALSOK(綜合警備保障)によれば、コストの点などから、今は警備員を置かない機械警備によるコースが多いそうだ。また、警備員を常駐させるのは、一般にはより大切な守るべき財産がある場合が多いという。
平尾CCでは、主に火事を警戒しての宿直員の常駐だったが、事件後はやめ、さっそく警備会社による機械警備に変える予定という。そのうえで、川本支配人は「今回のことを無駄にしないためにも、今後の警備は安全第一に、慎重に対処していきたい」と語る。
犯人についてだが「警察からは、何も知らされていません」とのこと。事件解決にはまだ時間がかかるかもしれない。
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