日本でもセルフプレーの増加とともに注目されるようになった距離測定器。昨年からは、ローカルルールが規定すれば競技での使用が可能となった。そして、今年9月、ツアー競技では世界初の試みとして、その使用を認め、希望する選手に貸与する国内シニアツアー競技が新設された。ただ、使用されるのはその試合1試合のみ。その経緯を追った。
元来、ゴルフ規則では規則14-3cで「プレーに影響するような距離や状況を測る目的の人工の機器はどのようなものも使ってはならない」として、距離測定器の使用は禁止さている。
だが、JGA裁定集(裁定は規則に準じる)で、06年から「距離のみを計測する機器の使用を許すローカルルールを制定することはできる」として、使用が許されることになった。
背景には、特にアメリカではクラブ競技等で広く使用され、競技のスピードアップ効果が認められるようになったという、時代の流れがある。
今回、レーザー式距離測定器の使用を認め、かつ全選手への貸し出しの用意をするのは、今年9月開催の新設競技「ビックライザックシニアオープン仙台」。
もともと大会の特別協賛でもある開催コースのビックライザックCCが日本プロゴルフ協会(PGA)に提案し、実現した。
「アメリカの競技の現状を知る倉本昌弘プロ(コースの監修者)のアドバイスもあって、ニコンさん(距離測定器のメーカー)のご協力を得たうえで、PGAに申請しました」(ビックライザックCC)
アメリカ事情に詳しく、トーナメント開催コースを監修した倉本昌弘の進言を元に試験的にやってみようということなのだ。
これを承認したPGAは、「機器に慣れるまで時間がかかるが、慣れれば競技時間短縮に効果があると思う」(松井功会長)とスムーズな競技進行を期待し、さらに「距離がはっきりわかるので、迷いなく打てる」(森静雄副会長)と競技のレベルアップ効果も狙って採用したようだ。
そのため、PGA事務局では「とにかく、選手たちに扱いに慣れてもらえるようバックアップしていきたい」と語る。
一方、選手たちの反応だが、05年のシニアツアー賞金王・三好隆プロは、この種の距離測定器は使ったことがないという。
だが今回は、「練習ラウンドで使ってみます。それで良ければ参考にさせてもらいますよ。でも、競技になったら、練習ラウンドでメモしたヤーデージブックを見ながら、自分なりの距離感でプレーするでしょうね」と語る。
練習ラウンドで何度か使用した経験があるという高橋勝成プロも、競技では使用しないだろうと語る。
「もし自分が判断した距離と、測定器が表示する距離が違ったりしたら余計に迷いますから。それに、プレーのリズムが狂うのも嫌ですし」というのが理由。とすれば、競技中に手にする選手は思ったより少なくなることも。
「ただし、帯同キャディに持ってもらい、本当に迷ったときに参考のために測ってもらうかもしれませんね」と高橋プロ。さて、本番ではどのような使われ方がされるのだろう。
ところで、今回測定器を用意する協賛企業のニコンだが、国内ではツアープロが使用しているレーザー式測定器の多くは同社製。
しかし、「一般に知られるようになってから、まだ2年程度です。現在は、プロの使用からトップダウンで、ようやく一般への普及が始まったところ」という段階。
そのため今回も、測定器の効果(スピードアップと自信を持ってスウィングできること)を正しく知ってもらうことを期待しての協力という。
「距離測定器は、距離のジャッジという不確定な要素を減らすための道具です。世界的な流れからして、いずれはポピュラーな道具になると思います」(ニコンビジョン・岩崎博道氏)
他のツアーでも使用が検討されているそうだが、次に導入されるのはどのツアーだろうか。
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