世界的な異常気象ラニーニャのせいか、梅雨に入ってもまともに雨が降らない。気象庁が先月発表した長期予報では、この夏(6月~8月)の平均気温は平年より高めで、降水量は平年並みかやや少なめと予想されている。これにゴルフ場関係者が気をもんでいる。
このところの異常気象の影響で、このままではこの夏に高温と渇水対策に頭を痛めるゴルフ場が出てくるかもしれない。
「今年は、熱帯地域の対流活動が活発でこういう年は暑い夏になりやすい。降水量の方は予想がかなり難しく、平年に近い量の雨が降るとみていますが、ここ最近は西日本を中心に雨が少ない傾向なのも確かです」(気象庁地球環境 海洋部気候情報課・渡辺典昭氏)
暖冬の影響で各地のダムは平年の貯水率を大きく下回っており、いまの時期にまとまった雨がないと、真夏の水不足は避けられない。大量の散水を必要とするゴルフ場ではいまから戦々恐々としているが、抜本的な対策はなく、まさしく神頼み。
全国的な水不足に見舞われた平成6年、タンクローリーをチャーターして麓から水を運んだのは東建塩河カントリー倶楽部(岐阜県)。
このときは公共機関なども殺到し、タンクローリーを借りることができたのは世間がお盆休みとなる1週間だけだったが、それでも約800万円を出費した。尾根筋に27ホールが広がる同ゴルフ場では、夏場、一日約1000トンの水を必要としているが、
「5台チャーターして1日4往復、200トンの水を運びましたが、グリーンとティに散水するだけで精一杯で、フェアウェイまでは手が回りませんでした」(山下訓総支配人)
今年はいまのところ「池の水は満水ですが、問題は梅雨明け後。あまり暑くなると足りなくなるかも」と不安は隠せない。
一方、例年のように水不足に見舞われる四国のゴルフ場は、いまから水の確保に動いているところもある。特に水がめの早明浦ダムの貯水率が33・3パーセント(6月21日現在)まで低下し、供給量を50パーセント削減する第3次取水制限を行っている香川県の場合は深刻だ。
昨夏も小雨で苦労したというエリエールゴルフクラブでは、「地下水を利用しているため、河川用水や河川に頼っている地域ほどせっぱつまった状況ではありませんが、夏場に備え水を多めに回してもらえるよう近くのため池管理者と交渉中」(ゴルフ場関係者)とのことだ。
秋口にトーナメントを開催するゴルフ場は、コース管理の失敗は許されないし、お天気を言い訳にもできない。
サントリーオープンを開催する総武カントリークラブ総武コース(千葉県)の前田光二支配人も空梅雨に恨めしげ。
「すでにかなり気温が上昇しているので、例年であれば7月から行う昼間の散水を今年は6月に入ってすぐ始めています。毎日、穴を空けたホースを使って夜中の3時から夜の11時まで行っており、コース管理の職員はそれこそ不眠不休です。雨が多いときのように芝の病気は心配ありませんが、手はかかります」
多くのゴルフ場では散水に自前の井戸水を利用しているが、高温傾向が続くけば井戸水も足りなくなる怖れがある。今年初めてマンシングウェアレディースを開催する南愛知カントリークラブ美浜コース(愛知県)でもすべての水を井戸に頼っている。
「開業当初は2本の井戸から1日1000トンの水が上がっていましたが、配管の老朽化などにより500トンまで落ち込んでしまいました」(山内章生支配人)
いくらコンピュータ管理の散水システムを備えていても、肝心の水がなければお手上げだ。
「平成6年の水不足の際は、レストランの食器をすべて使い捨ての紙皿に切り替え、お客様には水筒持参をお願いしました」(山内支配人)など、多くのゴルフ場では涙ぐましい努力をしている。
われわれもシャワーや蛇口の水を出しっぱなしにしないなど、できるかぎりの協力を心がけたいものだ。
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