全米女子オープンに、クリスティ・カー(29歳)が優勝したことで、女子ツアーの人気復活が期待されている。トップランカーの若いアメリカ人がナショナルオープンに優勝するのは久しぶり。ナビスコで優勝したM・プレッセルとともに、アメリカ人が1シーズン2度のメジャーを制するのは、7年ぶりということもあって、アメリカでは盛り上がりを見せている。そのC・カーの”ユニーク”な人となりを追った。
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ヘンシ~ン! 右は97年プロ入り当時。
左は現在のカー。信じられる?
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なにしろ、過去10年、米女子ゴルフ界は、外国勢に席巻され続けていた。A・ソレンスタム(スウェーデン)、K・ウェブ(豪州)、パク・セリ(韓国)などといったトップ争いをしていたプレーヤーの力に陰りが出てきたかと思えば、それに代わってトップの座に躍り出たのが、L・オチョア(メキシコ)だったので、アメリカのゴルフファンはがっかり? していたのも事実だ。
そんな中、プレッセルが期待にこたえて、4月のナビスコでメジャーを制し、彼女の人気が高まり、そして今度は、カーが優勝。全米女子オープンには、アメリカ人プレーヤーとしては、最高のランキングで参戦(ワールドランキング5位)したものの、カーはほとんどノーマークだった。優勝後に「カーって誰?」といった声が湧き起こり、その人物像が知られる中で、さらに人気が高まるといった現象が起きているのだ。
デビュー当時のカーを知る古いゴルフファンには、見分けがつかなかったかもしれない。同じパインニードルスで開催された96年の全米女子オープンでベストアマになり、ジュニアの年間最優秀選手にも選ばれたカーは、期待されて高校卒業後97年にプロ入り。ただ、その時は、160センチの身長に80キロを超える体重があったのだ。ところが、なかなかプロでは勝てない。そこで、一念発起して2年がかりのダイエットプログラムに取り組み、なんと 56キロまで体重を落とすことに成功した。しかも、トレードマークの大きな眼鏡をはずし、髪型まで変えたのだから、はじめ、父親さえも自分の娘とは分からなかったほどの変身ぶりを見せていたのだ。そして、その減量が効を奏して、2002年から試合で勝ち始め、今回のメジャーを含めて10勝。もともとの美人プレーヤーとは異なり、ダイエットの成功者として、女性ファンの心をも掴んだのだ。
それだけではない。カーの母親が、乳がんに罹ったことがあることから、以来乳がんの検査や研究に対して、支援活動を行っており、一度に 600万円を超える寄付を行ったこともある。メジャー最年少優勝を4月に果たした人気のプレッセルとも親しい間柄なのだが、それもプレッセルの母親が乳がんで亡くなり、当時、カーが彼女を助けたというエピソードも伝えられている。カーを慕う若手は、プレッセルばかりではない。
「アメリカ人として、全米オープンに勝つことは、女子プロとして最高の栄誉だ」とカーの優勝を自分のことのように涙を流しながら語ったN・ガルビスの言葉が、すべてを物語っている。
話は変わるが、この全米女子オープンの直前、オチョアが、すでに10年近くも使用しているピン社とようやくクラブ契約をしたことを発表している。メジャー未勝利とはいえ、昨年の賞金女王でワールドランキングトップのプレーヤーが、クラブ契約を結んでいなかったこと自体が驚きだが、それは、昨今の女子ツアーの人気が低迷気味なことと、「外国人」であるオチョアとクラブ契約することの広告メリットが低いという判断があった証拠ともいえるだろう。
変身美人でアメリカ人のカーが、女子ツアーの起爆剤になる可能性は、十分にありそうだ。
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