スチールシャフトに奪われている主役の座を取り戻すべく、再逆転を虎視眈々とねらっているカーボンシャフトメーカー。その急先鋒がグラファイトデザインとダイワ精工だ。
男子ツアーで圧倒的なシェアを握る「ダイナミックゴールド」。
一方、女子ツアーでは、近年「NSプロ950」や「同850」などの使用者が増え、それがアマチュアの軽量スチールブームを呼び込んだ。
また、クラブメーカーや量販店が、価格面で優位性が高いスチールシャフトモデルを販売施策の主力に据えてきたこともあり、OEMでもスチールの独走を許してきた。
しかし、潮目が変わる気配もある。
シャフトは趣味性が高いだけに、メーカーではトップダウン型のマーケティングに力を入れてきたが、ここに来てカーボンシャフトに対するプロの見方も変わってきた。
「以前は、カーボンというだけで拒絶反応がありましたが、最近は多くの選手が興味を持って打ってくれるようになりました」(グラファイトデザイン営業部長・木本裕二氏)
グラファイトデザインが完成させた新しいアイアン用シャフトは105グラムと115グラムの2種類。このシャフトの特徴は、現在市販されている多くのカーボンシャフトと違って飛距離を求めていないこと。
「あえて飛ぶようには作っていないので飛距離はスチールと変わらない」
それではなぜカーボンなのか。その理由は振りやすさと球の高さにある。
「トーナメントのグリーンはどんどん硬くなり、高い球を打って止めなくてはならないようになってきた」(木本氏)
それをいちばんよく理解しているのが片山晋呉だろう。
マスターズも視野に入れている片山がカーボンを使うのは、体力で劣っていても米ツアーのトップアスリートと同じ弾道で打つためといっていい。
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球の高さが売り。上・ツアーAD、下・ロッディオ
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また、同じく「ツアーAD」の105グラムを使う芹澤信雄は、「カーボンは、スチールに比べて手首やひじ、肩への衝撃が少ない」ともう一つの理由を挙げている。
また、「従来のカーボンとは一線を画している」という自信作はダイワ精工の「ロッディオ」。
独自のペンタクロス(5軸)カーボンを生かし、スチールの長所(ばらつきの少なさ)をベースに、球の上がりやすさをプラスしたシャフトだ。
「ロッディオ」には「100」「80」さらに「60」の重量帯がラインナップされ、「ダイナミックゴールド」「同SL」「NSプロシリーズ」そして既存のカーボンシャフトのユーザーまでも幅広くターゲットに設定されている。
重量級カーボンの普及には、やはりスチールとの価格差が最大のネックだが、アイアンセットの本数が減っているのは追い風になろう。
ツアーADはウッドに合わせてカラーを選べる受注生産品としてプレミアム感を演出している。
また、今後、「90グラム台のランバックスでNSの牙城を崩したい」とするフジクラや、「将来的に流れが出てくる可能性があるので研究は進めている」というマミヤオーピーなど大手メーカーの水面下の動きが表に出てくれば、重量級カーボンの市場はさらに広がるだろう。
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