民事再生手続き中の松名CC(愛知県)の一部会員が、返済率の引き上げを求めて、管轄の名古屋地裁に意見書を提出した。経営会社の小原興業による返済率案は50パーセント。破格の返済率でも不満を募らせる理由とは?
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母体企業のプライドが問われる? 松名CC
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「三井物産が経営母体でありながら5割の返還で済まそうというのはあまりにも会員をナメている」。
オープン当時からの会員のA氏は憤りを隠さない。
松名CCの経営会社である小原興業には三井物産6割、地元のゼネコン・矢作建設工業が4割を出資、歴代社長はいずれも三井物産出身者だ。
「名古屋テレビの花の木、東邦ガスの一志、竹中工務店の平谷、中京テレビの中京などはいずれも100パーセント預託金返還に応じているのに、なぜ天下の三井物産が5割なのか」(A氏)。
無論、母体企業が預託金の債務保証を行っていない限り、預託金について母体企業には何ら法的責任はない。
ただ、道義的責任や風評面での被害を回避するため、優良企業が母体企業の場合は、母体企業のプライドにかけて100パーセント返還を実施しているというのが現状。
三井物産は連結ベースで8000億円ものキャッシュを持つ。松名CCは負債総額72億円のうち、約1000人の会員に対する預託金が約70億円を占める。
70億円の肩代わりをしても経営にダメージを与えるとは考えづらい。
何よりも過去の三井物産の系列コースの事例に照らしても、今回は異例なのである。
三井物産は過去、松名CCの他、白鷺GC、竹岡GC、那須国際CC、鶴舞CCの5コースを系列下に置いていたが、竹岡以外は全てメンバーシップ。
白鷺GCは平成16年1月に再生手続きの開始を申し立て、同年6月ゴールドマン・サックスグループをスポンサーとする計画案で認可決定を受けている。
会員総数は440名だったが、申立前から三井物産が会員権を個別交渉で買い進め、申立段階での会員数は240名程度だったが、認可決定までには全て買い取っている。
買取金額は推定で総額46億円の預託金額面の70~75パーセント程度。
また、那須国際は会員総数300名強、預託金総額は推定60億円程度だったが、こちらは全額返還した上で、平成17年3月に東急不動産に売却。
同年12月には鶴舞CCを同じ東急不動産に売却しているが、こちらは預託金債務を全て東急不動産が引き継いでいる。
一体、なぜ松名CCだけが異なる扱いになったのか。
三井物産は「ケースバイケースで個別事情を検討して決めている。具体的な検討の内容についてはコメントを控えたい」としており、理由は不明だ。
平成11年に延長決議をしているので、預託金の償還期限まではあと2年あり、営業損益も平成18年3月期からは黒字に転換している中での民事再生申立。
一部会員の思いは裁判所や会社側に届くのだろうか。
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