安倍総理大臣を始め政治の世界では、二世、三世は珍しくないが、世襲の地盤など通用しないプロゴルフ界では、永久シード選手の二世でもなかなか表舞台に立つことができない。「二世プロは大成しない」とのジンクスも囁かれる中、中嶋常幸の長男・中島雅生がチャレンジトーナメントで来季のシード獲得を目指して奮闘している。
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2世選手のスターになれるか、中島雅生
(写真提供・JGTO)
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現在ツアー通算25勝以上の永久シードを持っている選手のうち二世がプロとして活動しているのは、杉原敏一(43歳)、尾崎智春(36歳)、中島雅生(27歳)の3人だが、まだシードを獲得した者は1人もいない。
杉原敏一がプロ2年目の91年に関西オープン(当時は賞金加算対象競技)で優勝したものの、ランク109位でシードには遠く及ばなかった。
99年にプロデビューした尾崎智春は00年に獲得賞金34万円、02年は同49万円で、それ以外の年度は獲得賞金はなく低迷している。
中島雅生も、先輩2人の二世プロと大差のない戦歴を重ねてきたが、7月に行われた2部ツアーのカニトップ杯チャレンジで優勝し、来季の裏シード獲得の可能性が大きくなってきた。
02年にプロ転向した中島は、シードにこそ手は届かなかったものの、これまで無難にQTのファイナル進出を果たしてきた。
が、昨年は、その前段階の3次予選で敗退。今季はチャレンジを含め、自力での試合出場の道が絶たれてしまった。
カニトップも主催者推薦枠での出場だった。
「去年、サード落ちが決まった翌日が僕の誕生日だったし、嫁さんは妊娠中だし、本当にショックで、クラブを握る気がしませんでした」(中島雅生)
その後、今年1月に長女のひかりちゃんが誕生。
「何か収入を得る方法はないかと考えて、小さいときから犬が好きだったので、そちら方面の資格を取ろうと案内書を取り寄せたりしていたんです」とプロの道を諦めかけているときに、半ば強制的に父・常幸の合宿に参加させられた。
「特に何を教わったという訳ではないんですけど、合宿といえどもやっぱり勝負じゃないですか。そういう一流選手との練習ラウンドが勉強になりました」
しかし、それ以上に発奮材料になったのが、長女の存在だ。
出られる試合には、ミニツアーからレギュラーのマンデーまで、貪欲に挑戦し、そのほとんどで上位入賞を果たしている。
「以前は、シードとかランクとかを気にしてプレーしていましたけど、今は子供のためにいくら稼げるかしか頭にありません。考えてみれば、プロスポーツ選手としては当たり前。オヤジには『サードで落ちて良かった』と言われました。サード落ちと子供の誕生、そのどちらが欠けていても、今のような気持ちにならなかったでしょうね」
チャレンジ優勝者は直近のレギュラーツアーに出られる制度があり、サン・クロレラの出場権を得た中島だが、あえて辞退して同週に行われた猿島チャレンジに出場。
もちろんチャレンジランク7位までに与えられる裏シード獲得を狙っての作戦だ。
今季のチャレンジ11試合のうち残りは5試合。
現在チャレンジランク4位につけている中島雅生の秋の陣に注目したい。
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