現在米ツアーで進行中のフェデックスカップ1位のボーナスはなんと1000万ドル(約11億6000万円・1ドル116円換算)。韓国のチェ・キョンジュ(K・J・チョイ)は、試合前にもしこれを獲得できれば、そっくりそのまま、チャリティに寄付すると公言したが、しかしこの公約、彼が勝っても果たせそうもない。
実は、PGAツアーの政策理事会(ポリシーボード)が、このボーナスを”年金”として支払うことを決めたのだ。
そのため、チェがフェデックスカップで優勝しても、このお金を手にするのは、リタイアした後の話で、慈善団体に寄付したくても出来ないというわけ。
フェデックスカップは、今年から始まった米ツアーのプレーオフで、先週のザ・バークレイズからツアーチャンピオンシップまでの4試合で、ポイントを争うもの。
このポイントシステムで、トップとなったプレーヤーには、前述のボーナスが支払われることになっていたのだが、チェのようにいまだに、多くのプレーヤーが、現金でもらえるものと思っているふしがあるのだ。
これが年金だということを知ったプレーヤーの中には、不満を漏らす選手が少なからず出てきている。
先週の第1試合を欠場したタイガー・ウッズは、猛暑の中での全米プロ優勝で、「フェデックスカップは、全面的に応援しているが、とにかく疲れきっており、休みが必要」と語ったが、その一方、「年金を受け取る年齢(年金受給資格は45歳から)になり、それが使える頃には、私は死んでいるかもしれない」とも語っている。
しかも、「ボーナスはオフィシャルマネーにはカウントされない」(PGAツアー広報)というし、ウッズは休んでいる間にビデオゲームのプロモーションを行う予定というのだから、ウッズにすればフェデックスカップへの意欲が半減したようにも思えてくる。
フィル・ミケルソンにしても「去年、この話を聞いたときには、すごい金額が勝者に渡されるのだから最高だと思ったけれど、勝った人間が何年もそれを見ることが出来ないなんて……やっぱり目の前に札束があったほうが、カッコが良いと思う」と語っている。
ただ、PGAツアーが、今回のボーナスを年金の形で支払うことに決めた理由も分からないではない。ウィンダム選手権に優勝したルーキーのブラント・スネデカーは、フェデックスカップの出場権を「4週間の1000万ドルの宝くじをもらったようなもの」と表現したが、高額宝くじと同様、当たればすぐに会社(ツアープロ)をやめるなどという選手も出てくる可能性もあるからだ。
もちろん、ウッズは、ジャック・二クラスのメジャー18勝を目標にしていることから、最低でもあとメジャーで5勝するまでは、ツアーから引退はないはず。
しかしそれにしても、ドバイでのコース設計に続いて、ノースカロライナで、アメリカでは初のコースデザインを行うことを、全米プロの直後に発表。
すでにコース設計家のトム・ファジオのところから敏腕設計家を引き抜いたとの話も伝わってきており、リタイア後の生活設計を立てているふしも感じられないことはない。
とすれば、この1000万ドルは馬鹿に出来ない金額となる。
この1000万ドルのボーナス問題、フェデックスカップの人気にも係わる問題だけに、この論議は、来年も再燃しそうだ。
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