正式には28日に発表されるが、男子ツアーを代表する名物トーナメント、サントリーオープンが今年の第35回大会をもって幕を閉じることになった。ツアーの隆盛をリードしてきた大会だけに、時代の移り変わりを象徴する撤退であり、これにより男子ツアーは抜本的な改革を迫られることになりそうだ。
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もう少しツアーを支えて欲しかったが…
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セレブが出場する華やかなプロアマ、チャリティ、大会ノベルティ……、今では多くのトーナメントで行われていることも、その嚆矢(こうし)はサントリーオープンという例は数多くある。
トーナメントを「見るスポーツ」「メディアスポーツ」として確立したという意味では、その歴史は男子ツアーの隆盛の歴史そのものと言っていい大会である。
「残念ですね。テレビ中継を通じて、トーナメントのイメージアップをはかり、ゴルフファンを増やした大会でしたからね。歴史を終えるにあたっては、ご苦労さまといいたいですね」と語るのは、第1回大会から身近で見てきて、『ゴルフを愛した男たち――サントリーオープン物語』という著書もある作家・菊谷匡祐氏だ。
同大会の撤退は、他の大会のそれとは関係者に与える衝撃の大きさが格段に異なる。
幕を閉じる理由を同社広報部では、「毎年、大会終了後に開催の意義を総括する作業を行ってきました。ですから、急きょ撤退することになったわけではありません。昨年の大会終了後に、男子ツアーの隆盛に果たせる役割は十分に終えたという結論に達し、35回の区切りということもあり、終了することになりました」と語る。
もちろん企業イベントの評価は、マーケティングの冷徹な判断で下されるので仕方のないことだ。
しかし、男子ツアーがあえいでいる今こそ、もう少し支えてもらいたかったという思いもある。
実は、大会関係者の間からも「この時期の撤退は、心苦しいものがないといえば嘘になる」という苦しい胸のうちが聞かれた。
また、そういう思いがあるからこそ、あえて大会前に撤退表明を行い、「今回はファンの皆さんをはじめ、選手、プロアマのゲスト、マスコミ等、トーナメントを支えてくださった多くの関係者に感謝の気持ちを伝える大会にしたい」(広報部)ということのようだ。
ところで、来季の男子ツアーだが、他にもウッドワンオープン広島が撤退。
新設がなければ、来季は全22試合となり、往時(82年は46試合)の半分以下にまで縮小することになる。
この事態に対し、日本ゴルフツアー機構(JGTO)の山中博史事務局長は、「現在開催されているトーナメントの価値を上げること。それと新しいトーナメントの形を作り上げることに力を注いでいきたい」と打開策を語る。
新しい形とは、海外のツアーと何らかの形で提携すること。
あるいは現行のツアー選手権のようにJGTO主催競技をさらに増やし、冠スポンサーの企業を募るという増強策である。
ともに、早期での実現を目指して既に検討を始めているという。
ともあれ、ツアーを象徴する大会の消滅を期に、男子ツアーが新たな段階に入ろうとしていることは間違いないだろう。
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